収支差率がプラスなら、経営は安定している。そう受け止めたくなりますが、現場の経営は、それほど単純ではありません。この点を強く指摘したのが、全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員です。
小泉委員は、資料に示された通所介護の収支差率6.2%について、それだけで安定経営と判断することに懸念を示しました。収支差額の実額にも触れ、特に小規模事業所では利用率や人件費の変化の影響が大きく、設備修繕、処遇改善、物価高騰への対応も必要だと説明しています。
ここでの大切な点は、「率」と「金額」の違いです。同じ収支差率でも、事業規模によって残る金額は違います。また、調査で示された平均値が、個々の事業所の状態をそのまま表しているわけでもありません。小泉委員の発言は、数字を否定するというより、数字の見方を一つに絞らないでほしいという問題提起と読めます。
さらに、小泉委員は、中山間地域や人口減少地域では、一つの通所介護事業所が地域の介護を支える大きな役割を担っていると述べました。その地域で事業所がなくなれば、利用者が別の事業所に移れば済むとは限らない。経営の継続が、地域のサービス基盤の維持につながるという視点です。
日本医師会の江澤和彦委員からは、通所介護や通所リハビリテーションの稼働状況に関するデータの要望も出ました。定員と実際の利用者数に開きがある事業所があり、稼働状況は経営にも、市町村の介護保険事業計画にも関係するためです。事務局は、指摘された点を確認する旨を答えています。
私は、この二つの発言を合わせて読むことが重要だと思います。収支が厳しい理由が、利用者の減少なのか、人材不足で受入れを増やせないことなのか、地域の移動負担なのかによって、対応の考え方は変わります。
今回、基本報酬の引上げが決まったわけではありません。小泉委員は底上げの必要性を訴え、江澤委員は判断に必要な稼働データを求めました。平均の収支差率を入口にしつつ、実額、規模、稼働、地域の役割まで見る。議事録は、そのような経営評価の必要性を示しています。
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文責・監修:株式会社M&Cパートナーコンサルティング
原稿作成日:2026年10月22日
対象:2026年6月15日開催・第258回社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料・議事録
本稿は第258回当日の発言の要約、背景説明、筆者の読み取りを含みます。会議で述べられた意見・提案は決定事項ではありません。後続会議の結論を反映した現行制度の案内ではないため、最新の厚生労働省資料・告示・通知等は読者ご自身でもご確認ください。
参照:議事録16、28、30ページ。背景資料:資料1・3。

