―専門性と安全を守る条件―
人材が不足しているので、今までどおりの体制を維持することが難しい。一方で、人を減らして安全性や支援の質が下がることは避けたい。この難しさが、第258回の議論にも表れています。
民間介護事業推進委員会の今井準幸委員は、中山間・人口減少地域などの提供体制を考える際、個別サービスの議論だけを先に進めるのではなく、地域特性に応じた制度の全体的な方向性を踏まえることが重要だと述べました。また、総括的な給付データだけでは論点の根拠として不足するため、議論に合った資料を用意するよう求めています。
つまり、全国共通の数字を見ながら、サービスごとに少しずつ要件を変えるだけでよいのか、という問いです。その地域で何を確保し、どのような方法で担うのかという全体像が必要だ、ということですね。
全国健康保険協会の鳥潟美夏子委員は、すべての地域で各サービス類型を増やすことを目指すのではなく、多機能化、集約化、広域化も視野に入れて必要な介護ニーズを満たすことを提案しました。同時に、質を担保しながら多様な対応を可能にする加算の在り方にも言及しています。
一方、連合の平山春樹委員は、ICTや見守り機器を活用することは重要でも、安易な人員配置の緩和には慎重であるべきだと述べました。特に短期入所では、夜間の安全確保、緊急時対応、看取りなど、機器だけでは代わりにくい仕事があります。
日本介護福祉士会の今村文典参考人は、介護福祉士の役割を、身体介護だけでなく、生活全体の観察、評価、多職種との連携、個別ケアの調整まで含む専門的な実践として説明しました。そして、その専門性を制度上も評価することが、働く人の意欲や人材不足への対応につながると述べています。
私は、これらの発言を、柔軟化に賛成か反対かという二択で整理しないことが大切だと思います。提供体制を変える必要性と、変えた後も確保すべき機能を、同時に考えているからです。
共同化や兼務などで何が改善するのか。その一方で、緊急時の対応力や専門的判断を誰が担うのか。今回示されたのは、体制の形だけでなく、安全と専門性を支える条件まで具体的に検討する必要性でした。
図解マンガでポイントを確認
文責・監修:株式会社M&Cパートナーコンサルティング
原稿作成日:2026年10月22日
対象:2026年6月15日開催・第258回社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料・議事録
本稿は第258回当日の発言の要約、背景説明、筆者の読み取りを含みます。会議で述べられた意見・提案は決定事項ではありません。後続会議の結論を反映した現行制度の案内ではないため、最新の厚生労働省資料・告示・通知等は読者ご自身でもご確認ください。
参照:議事録15~16、22、23~24、26ページ。背景資料:資料1~5。

