加算を基本報酬に組み込むという言葉を聞くと、事務が簡単になるのか、収入が変わるのかが気になりますよね。ただ、何を理由に、どの加算を、どのような要件で組み込むのかによって、意味は大きく変わります。第257回では、複数の立場から報酬体系の簡素化が提起されました。
健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、改定を重ねる中で加算の種類や取得要件が複雑になってきたと指摘しました。そのうえで、算定率が高い加算については、取組が広く普及したものと考え、要件を基本サービス費へ組み込むなどの整理を検討すべきだと述べています。
この考え方には、広く行われるようになった取組を、標準的なサービスとしてどう位置づけるかという問いがあります。ただし、算定率が高いことだけで直ちに加算がなくなるわけではありません。基本報酬に何を含め、どの要件を残すかという設計が必要です。
連合の平山春樹委員は、日常的に担っている基本的なサービスを基本報酬で評価するなど、簡素で分かりやすい報酬体系を求めました。伊藤委員が加算の普及状況に着目したのに対し、平山委員は、現場で恒常的に担っている役割をどう支えるかに重点を置いています。同じ組込みの議論でも、出発点が少し違うのですね。
慶応義塾大学の堀田聰子委員は、加算の性格や目的で分けて考える視点を示しました。例えば体制整備に関わるものは基本報酬に組み込むことを考えられる一方、特定の属性やニーズのある利用者への対応は、加算として残すことも考えられるとしています。
ここを具体的にすると、全ての利用者を支える共通の基盤と、該当する方を受け入れたときに必要になる対応とでは、費用の生じ方が違います。これは制度の考え方を説明するための整理ですが、その違いを見ずに一律にまとめると、必要な対応への評価が分かりにくくなる可能性があります。堀田委員の発言は、整理の基準を算定率だけに置かないことの重要性を伝えています。
堀田委員は、処遇改善加算についても管理にかかる負担を挙げ、基本報酬への組込みを検討すべきだと提案しました。ただし、この発言によって処遇改善の仕組みの変更が決定したわけではありません。報酬体系を簡素にすることと、職員の処遇改善を確保することをどう結びつけるかは、具体的な設計として別に考える必要があります。
福岡国際医療福祉大学の松田晋哉委員は、医療と介護の両方に詳しい事務・管理の担い手を確保する難しさにも触れました。将来のAI活用も念頭に、曖昧さや解釈の難しさを減らす観点から報酬制度を見直す必要がある、という指摘です。加算の数を減らすことに加え、判断に迷うルールを分かりやすくすることも、事務負担の軽減につながるという見方でした。
私は、この回の発言を読む際、簡素化の目的を確認することが大切だと思います。利用者に説明しやすくするのか、申請や計算を減らすのか、基本的なケアを安定して支えるのか。目的を確かめたうえで、残す機能、整理する要件、報酬の配分を見る必要があります。この会議の提案だけから、各事業所の増収・減収まで判断することはできません。具体的な制度設計へ進む際の論点が提示された段階です。
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文責・監修:株式会社M&Cパートナーコンサルティング
原稿作成日:2026年10月21日
対象:2026年5月25日開催・第257回社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料・議事録
本稿は第257回当日の議論を対象とし、後続会議の結論を反映した現行制度の案内ではありません。検討段階の提案を含むため、最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。
出典・参照箇所
厚生労働省 第257回社会保障審議会介護給付費分科会 議事録 11、14、25、28頁(PDFのページ番号)
上記資料・議事録をもとに発言を要約し、解説を加えて作成。所属・役職は会議当日。最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。

