同じ要介護度の方なら、必要な支援の量も同じでしょうか。介護の現場を思い浮かべると、そう単純ではありませんね。身体の状態だけでなく、一人暮らしか、家族が近くにいるか、必要な時間帯に支援を受けられるかによって、暮らしを支える方法は変わります。第257回では、この点を報酬やサービス選択の議論にどう反映するかが取り上げられました。
高齢社会をよくする女性の会の石田路子委員は、小多機のような小さな規模の中で、顔の見える関係を築き、その人の生活を尊重できることを評価しています。そのうえで、要介護度の低い利用者にも、小多機ならではの手厚い支援が行われていることに目を向け、その評価が十分なのかと問いかけました。
例えば、これは理解のための例ですが、歩行や食事の動作は比較的保たれていても、服薬を忘れやすく、食事を用意することが難しい一人暮らしの方がいるとします。一回の介助時間は長くなくても、朝夕の確認や短い訪問を重ねなければ生活が不安定になることがあります。身体介助の重さだけでは、その支援に必要な時間や調整を捉え切れません。
慶応義塾大学の堀田聰子委員は、過去の調査で、要介護度が上がるほど訪問回数が一様に増えるわけではないことに言及しました。そして、最近のデータで、要介護度別の利用状況に加え、独居や高齢夫婦のみの世帯など、家族構成との関係も確認してほしいと求めています。
ここは、すでに全ての実態が明らかになったという発言ではありません。利用のされ方を詳しく調べ、その結果を報酬設計に結びつける必要がある、という提案です。堀田委員は、軽度者の評価をどう考えるかという可能性にも触れていますが、その前提として実態把握を置いています。この順番を大切に読みたいですね。
また、中重度の利用者が小多機から他のサービスへ移る背景についても、単に小多機では支えられないから、と決めつけない見方が示されました。堀田委員は、自己負担の違いなどもサービス選択に影響している可能性を挙げています。これは背景要因としての仮説であり、利用者が移る主因が費用だと実証されたわけではありません。
福岡国際医療福祉大学の松田晋哉委員も、要介護度別の数字に加え、本人の状態、家族構成、地域のサービス提供体制を組み合わせて分析する必要があると述べました。誰が、どのような事情で、そのサービスを選んでいるのかが分からなければ、サービスの再編や集約についても十分な説明ができない、という問題意識です。
私は、三人の発言をつなぐと、要介護度という区分の中にある生活の違いを見落とさないことが問われていると読みます。同じ要介護度でも、家族が毎晩訪ねられる方と、近隣にも支援者がいない方では、必要な支え方が異なります。その違いをどのようなデータで捉えるかが、次の制度設計につながるのです。
小多機には中重度の方の在宅生活を支える役割があります。同時に、比較的早い段階から関わり、日々の小さな支援を積み重ねる役割もあります。この会議では、その双方をどのように評価するかが提起されました。要介護度の数字を入口にしながら、その人がどのように暮らしているのかまで見る。議事録から受け取っておきたい視点です。
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文責・監修:株式会社M&Cパートナーコンサルティング
原稿作成日:2026年10月21日
対象:2026年5月25日開催・第257回社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料・議事録
本稿は第257回当日の議論を対象とし、後続会議の結論を反映した現行制度の案内ではありません。検討段階の提案を含むため、最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。
出典・参照箇所
厚生労働省 第257回社会保障審議会介護給付費分科会 議事録 16~17、25~28頁(PDFのページ番号)
上記資料・議事録をもとに発言を要約し、解説を加えて作成。所属・役職は会議当日。最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。

