介護給付費分科会の議事録を読むとき、私は、発言の結論と一緒に、その人がどのような立場から問題を見ているのかを押さえることが大切だと考えています。同じ人材不足という課題でも、利用する家族、ケアを担う職員、事業所を運営する側では、困っている場面が少しずつ違うからです。
2026年5月25日の第257回では、2027年度介護報酬改定に向け、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護が議論されました。このシリーズでは、それぞれ小多機、看多機、認知症グループホームと呼びます。通い・訪問・泊まりを組み合わせる小多機、看護を含めて在宅療養を支える看多機、共同生活の場で認知症の人を支えるグループホーム。仕組みは違いますが、地域での暮らしを支えるという点でつながっています。
まず注目したいのは、認知症の人と家族の会の和田誠参考人の発言です。和田参考人は、小多機を必要とする本人・家族がいても、ケアマネジャーの交代などが利用の壁になり得ると指摘しました。利用者が減っているという資料の数字に対し、利用したくても利用できない事情を確かめてほしい、という問題提起でした。
これに対し、事業の維持という面から問題を説明したのが、全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員らです。登録者数が収入に影響する一方、夜間対応などに必要な体制は簡単には縮小できません。必要なサービスが地域から失われないよう、体制を支える報酬をどう考えるかが問われました。
職員の立場からは、連合の平山春樹委員が、夜勤、緊急対応、看取りなどの負担を取り上げています。事業所が存続していても、その内側で働く人が休憩を取れず、無理を重ねているのであれば、安定した提供体制とは言いにくい。私は、この発言を、サービスの継続を職員の働き方まで含めて捉える問いとして読みました。
また、健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、人材や財源の制約を踏まえ、報酬体系の簡素化などを提起しました。経団連の間利子晃一参考人や全国老人保健施設協会の東憲太郎委員からは、地域全体の既存サービスや人材を見て提供体制を考える意見が出ています。個々の事業所を支える議論と、地域全体の資源をどう使うかという議論の両方があるのですね。
学識者の堀田聰子委員、松田晋哉委員は、要介護度だけでは分からない本人の状態や家族構成、地域のサービス環境にも目を向けています。数字を見てすぐに結論を出す前に、数字の背景を分析する必要がある、という視点です。
ここで気をつけたいのは、発言者を所属だけで単純に分類し、その人が何に賛成・反対なのかを決めつけないことです。例えば加算の整理では、保険者側からも、算定率が低い理由を確認すべきだという意見が出ています。一つの発言の中に、簡素化を進めたい考えと、必要な機能を残したい考えが共存していることがあります。
この会議は、具体的な改定内容を確定した場ではありません。各委員の意見を踏まえて検討を続ける形で閉会しています。これからの各回では、誰が何を提案したのか、その理由は何か、関連する意見はどうつながるかを、一つずつ見ていきましょう。
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文責・監修:株式会社M&Cパートナーコンサルティング
原稿作成日:2026年10月21日
対象:2026年5月25日開催・第257回社会保障審議会介護給付費分科会の公開資料・議事録
本稿は第257回当日の議論を対象とし、後続会議の結論を反映した現行制度の案内ではありません。検討段階の提案を含むため、最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。
出典・参照箇所
厚生労働省 第257回社会保障審議会介護給付費分科会 議事録 1、7~28頁(PDFのページ番号)
上記資料・議事録をもとに発言を要約し、解説を加えて作成。所属・役職は会議当日。最新の厚生労働省資料・通知等は読者ご自身でもご確認ください。

