あなたが現在見ているのは 地域で不足する医療機能とは――夜間休日、在宅医療、公衆衛生をどう考えるか(第3回/全5回)

地域で不足する医療機能とは――夜間休日、在宅医療、公衆衛生をどう考えるか(第3回/全5回)

→目次に戻る

こんにちは。M&C Partners Consulting代表の村上佳子です。

前回は、外来医師過多区域で新規開業する場合、開業6か月前の届出や、地域の外来医療の協議の場が重要になるとお話ししました。

今回は、そこで要請される可能性のある「地域で不足する医療機能」について整理します。

厚生労働省資料では、地域で不足している医療機能として、夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等が例示されています。また、医師不足地域での医療の提供として、土日の代替医師としての従事なども例示されています。

この部分は、先生方にとって非常に現実的な論点です。

なぜなら、開業後の生活や診療スタイルに直結するからです。

まず、夜間・休日の初期救急です。

これは、救急車で搬送される重症救急というよりも、地域住民が夜間や休日に体調を崩したときに受診する、比較的軽症の救急外来をイメージするとよいと思います。

在宅当番医制への参加。
休日・夜間急患センターへの協力。
地域医師会の当番制への参加。

こうした形が考えられます。

ただ、これは診療科によっても、医師の年齢や家庭事情によっても、対応可能性が大きく変わります。

小児科の先生であれば、休日診療への期待が大きい地域もあるでしょう。
内科の先生であれば、発熱や急性疾患への対応が求められるかもしれません。
整形外科の先生であれば、休日の外傷対応が期待される地域もあると思います。

一方で、開業直後から夜間・休日対応を広げすぎると、院長先生の負担が大きくなり、通常診療にも影響が出ます。

ですから、ここでは「できる・できない」を正直に整理することが大切です。

次に、在宅医療です。

在宅医療は、今後ますます重要になります。

高齢化が進み、通院が難しくなる患者さんが増えていく中で、地域の中で在宅医療を担う診療所の存在は欠かせません。

ただし、在宅医療も、簡単に「やります」と言えるものではありません。

24時間対応をどうするのか。
訪問看護ステーションと連携できるのか。
薬局、ケアマネジャー、介護事業所との関係をどう作るのか。
看取りまで対応するのか。
外来診療とのバランスをどう取るのか。

考えるべきことが多くあります。

開業当初から在宅療養支援診療所を目指すのか。
まずは自院のかかりつけ患者さんの訪問診療から始めるのか。
近隣の在宅専門クリニックと連携するのか。

このあたりは、開業前に方針を決めておいた方がよいと思います。

そして、公衆衛生です。

公衆衛生というと、少し広い言葉ですが、クリニックに関係するところでは、学校医、園医、予防接種、産業医、健診などが挙げられます。

これらは、日々の外来収入だけを見ると、必ずしも大きな収益源ではないかもしれません。

しかし、地域医療への貢献という意味では非常に重要です。

特に、地域の学校医や園医を担う先生が不足している地域では、新規開業の先生に声がかかることも考えられます。

ここで大切なのは、地域貢献を「無償の負担」とだけ見ないことです。

学校医や予防接種、健診を通じて、地域住民との接点が増えます。
医師会や行政との関係も深まります。
地域の中で、先生のクリニックが認知されていきます。

長い目で見ると、これはクリニック経営にとっても大きな意味があります。

もちろん、何でも引き受ければよいという話ではありません。

院長先生が倒れてしまっては意味がありません。

大事なのは、
「自院の診療方針と合う地域貢献は何か」
「無理なく続けられる協力は何か」
「将来のクリニック像につながる役割は何か」
を考えることです。

たとえば、生活習慣病を中心に診る内科であれば、特定健診や予防接種、在宅への移行支援と相性がよいかもしれません。

小児科であれば、乳幼児健診、予防接種、園医・学校医との関係が重要になります。

整形外科であれば、高齢者の転倒予防、介護予防、地域包括支援センターとの連携も考えられます。

精神科・心療内科であれば、産業医や復職支援、学校との連携が地域ニーズになることもあります。

つまり、地域で不足する医療機能は、単なる行政からの要請ではなく、自院の専門性を地域にどう活かすかという問いでもあります。

この視点を持てる先生は、これからの時代、地域の中で強いクリニックを作りやすいと思います。

第4回では、要請に応じない場合に何が起こるのか、診療報酬上の影響を具体的に見ていきます。

→目次に戻る