あなたが現在見ているのは 身体的拘束の「実施割合」をどう数えるか――センサー、固定ベルト、車椅子対応の注意点

身体的拘束の「実施割合」をどう数えるか――センサー、固定ベルト、車椅子対応の注意点

→目次に戻る

こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、身体的拘束の実施割合についてお話しします。

令和8年度改定では、身体的拘束最小化の実績等に係る基準として、身体的拘束の実施割合が集計されており、1割5分以下であることが示されています。

では、この実施割合はどう計算するのでしょうか。

考え方としては、直近3か月間の入院料算定日数を分母にして、そのうち身体的拘束を実施した日数を分子にします。つまり、「患者数」ではなく「入院料算定日数」と「拘束を実施した日数」で見るということです。

ここで、現場で必ず迷うのが、「これは身体的拘束に含めるのか、含めないのか」という判断です。

まず、センサークリップ等のみを使用する場合は、身体的拘束を実施した日数に含めないとされています。ただし、患者さんの動作により容易に外れ、自発的な運動を制限しない状況に限られます。

つまり、「センサーだから全部カウントしなくてよい」という話ではありません。センサーの使い方が、患者さんの動きを制限していないかどうかが大事です。

次に、処置時や移動時の短時間の固定です。

患者さん本人または家族の同意を得たうえで、安全確保のために短時間固定ベルト等を使う場合で、使用中は職員が常に患者さんの側に付き添い、処置や移動の終了時に確実に解除している場合は、身体的拘束を実施した日数に含めないとされています。

ここも大切です。

短時間であること。
安全確保が目的であること。
同意があること。
職員が側に付き添っていること。
終了時に確実に解除していること。

これらが揃っていないと、「カウントしなくてよい」とは言いにくくなります。

そして、車椅子の固定ベルトです。

患者さんが訓練のために自由に車椅子を操作できる状態で、本人または家族の同意を得たうえで、訓練時間中のみ安全確保のために固定ベルトを使用する場合は、実施日数に含めないとされています。一方で、車椅子の前にオーバーテーブルを設置する、車椅子をロックするなどして患者さん本人の活動を制限している場合は、身体的拘束を実施した日としてカウントされます。

200床未満の病院で実務上大事なのは、判断基準を病棟ごとにバラバラにしないことです。

ある病棟ではカウントしている。
別の病棟ではカウントしていない。
夜勤帯だけ記録が曖昧。
センサーと拘束具の区別が曖昧。
車椅子のオーバーテーブルの扱いが統一されていない。

こうなると、実施割合の集計が信頼できなくなります。

事務長としては、単に数字を集めるだけではなく、まず「何を身体的拘束としてカウントするのか」の院内ルールを確認してください。

看護部としては、記録様式に「拘束の種類」「開始時刻」「終了時刻」「理由」「同意」「解除検討」「代替策」を残せるようにしておくことが大切です。

また、身体的拘束を実施した日数に含めないケースであっても、常に解除や代替策の導入を検討し、最小化に努めることが求められています。

つまり、「カウントしなくてよいから何もしなくてよい」ではありません。

むしろ、カウントしないケースも含めて、現場で患者さんの自由をどこまで守れるかを考える必要があります。

実施割合は、単なる数字ではありません。病院のケアのあり方が見える数字です。

次回は、委員会、ラウンド、代替策検討をどう実務に落とし込むかについてお話しします。

→目次に戻る