先月取り扱った副業についての話題が好評でしたので、引き続きこちらを掘り下げていきます。医療機関で務める人が副業する場合、気になるのが感染対策です。そこで今回は、感染対策のエキスパートである新改法子氏に、ご意見を伺ってみました。
医療従事者の副業どう考えるか?
正規の職員の場合、前の職場では、兼業の許可が必要でした。しかし、パートスタッフには制限がなく、アルバイトをする人もいたと思います。ただ、様々な理由がありますから、医療機関勤務だから一律に禁止するのもどうかしら?と個人的には思います。病院側が副業を理解した上で感染対策を指導することが重要だと思います。
外での行動は管理できないからルールは副業をしない人にも知らせていただきたいです。副業はだめで交流は良いのかというと、感染対策上は同じリスクですから、症状が出た場合にどのような対応をするのか。そんな視点で整えて行く必要があります。
1人ひとりの生活を守りつつ、全体として支援し合う雰囲気があるかどうかも重要です。支え合う雰囲気がなければ「感染したかな」と思っても言い出せなかったりします。
地域や病院によって対応が異なることも問題です。感染管理の判断が個々に依存している状況は、経済的にも精神的にも負担になります。5類になったとはいえ国家レベルでの対処が必要と感じております。(新改法子氏)
新改 法子 (しんかい のりこ)
看護師・感染管理認定看護師・感染症看護専門看護師
地域の基幹病院で30年勤務。2020年1月から新型コロナの感染対策や感染した患者の看護に携わる。現在は、大学の看護学部で教員として従事。感染管理の知識を活かし、看護教育や地域医療の貢献を目指す。
感染対策の指導と教育も重要と再認識
新改氏の見解を受け、労務管理上のアドバイスとして、以下のポイントを考慮することをおすすめします。
① 副業ポリシーの策定
なんといっても職員に周知させることが重要です。副業の許可基準や手続き、感染対策に関するルールを明確に示しましょう。厚労省のホームページにもかなり詳しい情報が掲載されています。
② 感染対策の指導と教育
新入職員が入職してきたときは必ず、また、折に触れて、職員に対して感染対策の重要性を啓発しましょう。理解したつもりでも忘れてしまったり、甘さが出てきたりするのが人間です。適切な手洗いや防具の着用、手指衛生の基本の振り返り、距離の確保などの行動を確認し続けることが重要です。
③ 病状報告と対応策の整備
症状が出た場合や感染が疑われる場合に速やかに報告するよう求めること、そしてそれがストレスになりにくいよう、日頃からコミュニケーションを充実させ、サポート体制の構築が重要です。
石井 洋(いしい ひろし)
M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 人事コンサルティング部 部長
長崎出身。九州大学卒業。社会保険労務士。フットワークが軽く、かゆいところに手の届くコンサルティングで、主に若い経営者からの人気を誇る。就業規則や人事考課制度の見直しから、スタッフミーティングの開催など、幅広いコンサルティングを行う。セミナー講師の経験も豊富で、その場のニーズに合わせた柔軟なセミナーを得意。趣味はバドミントン・フットサル・旅行。