今月は、令和4年10月28日に発表されている厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」から医療・介護業界の皆様の関心が強いと思われる結果について分析します。
(こちらの調査は、日本標準産業分類16大産業のうちから、6,400社を無作為に抽出して3,757社から有効回答を得た統計調査です。)今回この調査を取り上げた理由として、採用求人における競争が激化していることを前提に、いわゆる世間一般の流れと数値というものを提示することにあります。どういった条件を再考する必要があるのか、考えるきっかけになれば幸いです。
(1)主な週休制の形態別企業割合
やはり完全週休二日制の導入が進んでいる状況が見てとれます。企業割合としては、1,000人以上の大企業が最も多く、小規模会社ほど導入が進んでいない実態と言えます。
(2)年間休日総数階級別企業割合
近時の求人において、特に大きな影響を与えていると感じられる年間休日。大企業と小規模の会社との差が明確に出る結果となっています。100日を切る年間休日だとかなり厳しい求人状況が想定されるのは目に見えるところです。また120日以上を見ると、1,000人以上の企業は51%が120日以上の休日となっており、この条件差を踏まえて小規模の会社は求人を想定する必要があります。
(3)一律定年制を定めている企業における定年年齢
少子高齢化による働き手の減少により、関心を集めている印象がある定年年齢の延長。
徐々に65歳定年制をひいている企業が増え、20%近くの企業が65歳定年を採用しています。特に人員に苦しんでいる小規模企業と医療福祉業が20%を超えているのが印象的です。逆を言えば、65歳定年制を取っている医療・福祉業は、その分定年が近い年齢層への訴求力が高まる可能性はある一方、65歳を前提として賃金体系を考える必要があるでしょう。
(4)基本給の決定要素
職務・職種などの仕事内容によって決定する割合がかなり高まっているのが見て取れます。それに伴って、学歴とがっており、いわゆる「ジョ系を取る企業が増える傾向くでしょう。
(5)賃金制度の改定状況、過去3年間の賃金制度の改定内容別企業割合
直近3年間で、賃金制度の改定割合が平成29年調査時と比べてどの企業規模でも増えているのが明らかです。やはり近時の採用の流れや、ジョブ型への流れ、物価高も含めた様々な要素が絡んで賃金体系を再考する流れになっているのだと思います。(4)でも見てとれる「職務や職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」、「手当を縮減し、基本給に組み入れ」、多数の企業が社員にどういう賃金を提示し、今後『選ばれる会社』になるかを考えています。
(1)~(5)を踏まえて、自社が今何を変えるべきなのか、時間はさほどありません。
石井 洋(いしい ひろし)
M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 人事コンサルティング部 部長
長崎出身。九州大学卒業。社会保険労務士。フットワークが軽く、かゆいところに手の届くコンサルティングで、主に若い経営者からの人気を誇る。就業規則や人事考課制度の見直しから、スタッフミーティングの開催など、幅広いコンサルティングを行う。セミナー講師の経験も豊富で、その場のニーズに合わせた柔軟なセミナーを得意。趣味はバドミントン・フットサル・旅行。