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職員のソーシャルメディア利用における組織の対応

 今回は、近時お客様の関心が非常に高まっていると感じる職員のソーシャルメディア(以下、SNSと表記)利用における組織の対応について解説したいと思います。

 スマートフォンやタブレット端末の普及・副業を促進する社会の流れにより、職員個人が自分自身でSNSを利用する機会は非常に増大しており、職員の不適切な投稿等がきっかけで不特定多数から批判を受けるリスクが顕在化しており、結果として①発信者の個人情報が特定される事態を招く、②ひいては職員の所属する組織も批判を受けるリスクがある状況と言えます。特に医療機関においては、個人情報の中でも特に重要な心身の健康状態という情報を扱っていることから、その流出は組織の死活問題になりかねません。また、近時は医療機関内の職員同士でLINEをはじめとしたSNS利用も進んでおり、そのやり取りに際してのトラブルについてもご相談を頂くケースが増えています。
 では、今後組織として職員のSNS利用に際してどのような対応が考えられるでしょうか。まず、想定しうる対応として、SNS利用時のガイドラインを策定し、職員向けに教育研修を行うことが考えられますが、ガイドラインを設ける場合にどういった視点で設けるべきかを整理します。

  1.  ガイドラインを設ける目的は何か。そして、仮にガイドラインに違反する行為があった場合に、どの程度の強制力を持たせるか(就業規則と同程度の「規程」として設けるのか、あくまでも推奨であるのか)。違反行為があった場合の対応についても規定する。
  2.  ガイドラインは、業務時間内の利用に関するものか、時間外利用に関するものか。特に業務時間外の利用に関して強力な制約を設けることは、個人の私的時間に対する不当な制約となる可能性があるため(SNSの私的利用は原則自由)、投稿によって組織の名誉や信用が毀損されてしまう場合や組織に損害が生じる場合等に限定した形でガイドラインを考えることが必要。
  3.  ガイドラインはどこまでの職員を対象とするものであるのか。正規職員のみならず、パートタイム職員、嘱託職員、アルバイト職員等、全職員を対象にするものか。
  4.  全職員を対象とする場合は、新規採用を行う際にSNSに関するガイドラインを雇用契約締結時に雇用条件の一つとして契約締結することも考えられます。(または誓約書を交わす等)

 次に、ガイドラインを設ける場合の盛り込むべき条項例として以下のような項目が考えられます。

(1)SNS利用によって、インターネット上に情報の書き込みや画像の掲載等を行ってはならない情報の定義

  • 組織の業績、事業計画
  • 取引先、患者・利用者・家族の情報、画像
  • 役員、従業員の個人情報・プライバシー

(2)医療機関名、組織のロゴや組織に関連する画像、その他組織を特定することが可能な情報は明らかにしないこと。個人のSNSの私的利用において、組織名が判別できるような投稿はしないこと

(3)インターネット投稿時における留意点

  • 知的財産権、肖像権(特に患者の動画・画像)を含む第三者の権利侵害防止
  • SNS利用時の心構え

  • 誤った情報や思い込みによる投稿を行わないように注意する
  • 情報引用に関する留意点(引用元の正確な引用、製品名・社内等に関する情報の正確な記載)
  • 特に社内でのグループ等においては、投稿内容に批判的・否定的な反応が生じた場合は、感情的な言葉遣いでの投稿が発生する場合があるため、不敬な内容・攻撃的な投稿内容は発信しないようにする
  • SNS上でのいじめや暴言といった誹謗中傷の禁止
  • 人種、思想、信条などの差別的もしくはそれに繋がる内容の禁止
  • 職員個人で利用するSNSにおける投稿はあくまで自分自身の個人的見解であり、所属している組織には関係ないことを記載すること

(4)違反行為が行われた場合の手続

 上記、ガイドラインを定めた場合でもその後の職員研修等、ガイドラインを実効化するための組織の取り組みは必須です。就業規則と同様にガイドラインを効力あるものに運用していくために、SNSによるトラブルの事例の共有等の定期的な情報発信、新しい職員の方が入社した場合に、一人ずつ説明をしていく等の地道な取り組みがガイドラインの実効性を担保する事に繋がります。

労務管理_石井氏

石井 洋(いしい ひろし)

M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 人事コンサルティング部 部長
長崎出身。九州大学卒業。社会保険労務士。フットワークが軽く、かゆいところに手の届くコンサルティングで、主に若い経営者からの人気を誇る。就業規則や人事考課制度の見直しから、スタッフミーティングの開催など、幅広いコンサルティングを行う。セミナー講師の経験も豊富で、その場のニーズに合わせた柔軟なセミナーを得意。趣味はバドミントン・フットサル・旅行。