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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.30 院長先生、ご自身の思いを伝えていますか?

「思い」を理解してもらうには、何度でも、言葉にして伝えていく、ということがとても大事です。

 最近、クリニックの先生から看護師と事務職員の確執があって大変・・・とのご相談を受けることがあります。

 場面はいろいろなのですが、共通して言えることは、診療に支障が出てきているということ・・・。お聞きしていると、その中には共通した課題があるように思います。

 ひとつは「院長先生の思いが明確に伝えられていない」こと。

 もう一つ、世代間の考え方の違いをお互いに認め合っていないということ。

 今日はひとつ目の「院長の思いを伝える」ということをお話ししていきたいと思います。

 「思い」を辞書で引いてみると、「頭で考えていること」「考えること全般」とあります。

 クリニックの場合で言うと、「院長先生の考えていること」となり、クリニックの理念にもつながってきます。

 頭で考えていることは、言葉にしないとわかりません。親子でも、夫婦でも、一緒にいることが長くても、「あれ?そんなこと考えてたの?」ということ、ありますよね。自分自身の考えを理解してもらおうと思えば、折に触れ、何度でも、言葉にして伝えていく、ということはとても大事になります。

 以前の医療機関では、「来院された患者さんを診療する」ということに注力し、それが当たり前でしたね。つまり、「待ちの医療」です。クリニックを開業すれば、待っていても患者さんが来てくれる・・・そう考えておられる先生もいらっしゃるでしょう。

 また、患者さんの立場に立っても、「待たされる時間の長さ=患者さんが多い=良い病院」という感覚もあったことは否めないでしょう。ある意味では患者さんにとっても「待ちの医療」がステータスになっている時代でもありました。

 しかし、待ち時間が長ければ、クレームにもつながるし、とにかく「お待たせしないようにする」ことが最優先課題だと認識されている医療機関も多いと思います。「患者さんをさばく」ということが求められて、医療の現場は殺伐としていたように思います。

 3年前に新型コロナウイルス感染症が拡大して、様子が一変しました。

 「医療機関で待つこと=感染リスクを高める」という風潮が出て、狭い待合室に大勢の方と一緒に待っていることに不安を感じる方が多くなりました。

 「不要不急の外出禁止」の本来の意味を理解せずに、医療機関に行くことをためらい、治療を中断する事態になってしまったのです。

 当然職員に求められることは、仕事のスピードとともに、感染対策や治療継続の案内などが求められるようになりました。

 小児科や耳鼻科はスマホで予約が取れるかどうか・・・ということもクリニック選びの基準になってきたとも言われています。

 感染対策が第一優先課題となり、作業は圧倒的に増えています。ある意味、患者数が減って、ホッとしていることもあったかもしれません。

 それとともに、患者さんとも職員とも対話する機会も少なくなってきているのが現状ではないでしょうか?

 患者さん対応だけでなく、コロナ禍においては、先生の「思い」を十分に伝えていく場が少なくなってきていると思います。マスク生活の中で、挨拶をしても、だれにしているかわからない、会話しなくても業務が成り立っていく工夫もありますね。しかし、このような状況下だからこそ、意識的に院長から発信していくことも大事だと思います。

 例えば、「今日こんな対応してくれてうれしかったよ」とほめること、挨拶は名前を呼んで一言添えることを意識してみませんか?

 逆に、困った対応があったときは、「ダメじゃないか!」と大声を出すのではなく、「こんなこと(問題)があったんだけど、どうすればよかったと思う?」と、一緒に考える時間をとるように投げかけてみてはいかがでしょうか。もちろん、よほど目に余る場合は、場所を変えて注意することも必要です。

 院長に思いがあるように、スタッフ一人ひとりにも、感情や思いがあります。チーム医療を一緒に実践する「仲間」として、一緒に考えられるようになるといいですよね!

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。