You are currently viewing 最新法令改正について

最新法令改正について

今回は、今後実施される法改正や、今後行政が実施する方向性をご案内します。
1️⃣ 労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加
2️⃣ 高年齢雇用継続給付の見直し
3️⃣ 子ども・子育て政策の強化について(試案段階)
4️⃣ 同一労働同一賃金に関する是正指導の方向性

1️⃣ 労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項が追加(令和6年4月から)

出典:厚生労働省リーフレットより

 まず、全ての契約締結時と有期労働契約更新時に将来の配置転換などによって、変わり得る就業場所や業務の範囲を提示することが明示事項に追加されました。就業場所や業務内容が変更する可能性があるお客様(例:複数事業場・複数のサービスがある、又は事業場異動に伴い、業務内容に変更可能性がある場合)は、その変更可能性を事前に提示する必要が生じています。
 次に、実務的に大きい改定は「無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時」に無期転換申込機会の明示が必要となりました。これまでは、無期転換申込権が発生しても会社はそれを通知する義務はありませんでした。結果として無期転換ルールは周知が進まず、あまり無期転換が進まなかったという実態がありましたが、今後は通算5年を超えて後、新たに有期労働契約を更新する際は、“あなたは無期契約に切り替える申込機会を得ました。無期転換後の労働条件は〇〇です”ということを明示する必要があります。(※無期契約になっても正社員化する必要はない事は以前と同様)

2️⃣ 高年齢雇用継続給付の見直し(令和7年4月1日施行)

 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金額が75%未満となった高齢者に対し、65歳に達するまでの期間について、従来は賃金の15%を支給していた高年齢雇用継続給付が令和7年4月以降は、賃金の10%支給に縮小されることになっています。

3️⃣ 子ども・子育て政策の強化について(令和5年3月31日 子ども政策担当大臣発表)

 この試案の中には、国の危機感が良く見て取れます。「日本の出産数は1990年から2000年までの10年間の出生数の減少は約3%であるのに対し、2000年から2010年は約10%の減少、2010年から2020年は約20%の減少、さらにコロナ禍の3年間(2020年~2022年)で婚姻件数は約10万件減少」「このままでは2030年代にはいると、我が国の若年人口は現在の倍速で急減」するため、2030年は少子化対策の分水嶺にある、という事を明確に記載しています。
 その対策として、児童手当の拡充や出産一時金の大幅な引き上げ、育児休業時の給付の引上げ(現在67%から8割程度への引上げ)といったことを次々と記載しています。
 また男性の育児休業取得率の目標を大幅に引き上げ、従来2025年までに30%と掲げていた数値目標を2025年には、公務員85%、民間50%に、2030年公務員85%、民間85%取得へ引き上げています。(ちなみに直近の取得率は男性取得率13.97%)

4️⃣ 同一労働同一賃金に関する是正指導の方向性

 厚生労働省は非正規雇用労働者の賃上げに向けた同一労働同一賃金の取組強化期間を設定し、その遵守の徹底に向けた取組を集中的に行う旨を発表しました。(令和5年3月15日から5月31日)
 今後、各都道府県の労働局や労働基準監督署が、同一労働同一賃金に関して調査や是正指導を強めていくのは間違いありません。

 実は、この1️⃣~4️⃣はバラバラのテーマではありません。すべてストーリーは繋がっています。
 政府としては、3️⃣子ども・子育て政策の強化として、子育て世代の雇用安定や、処遇改善に強い危機感を持っています。そのため、特にパート社員が多い子育ての母親世代(育児休業後退職等)の処遇改善を図るために4️⃣を進め、(最低賃金の急速なアップもその一環)、かつ雇用の安定化を図るために、1️⃣を改正し、更に同一労働同一賃金に関連して、定年後に急激な処遇ダウンに関する補填割合を縮小(2️⃣)することで、定年後についてはある程度自助努力への動きを強め、少子化の分水嶺にある2030年に向けて、定年後であっても給与を減らさず働く状況を整えて欲しい、というメッセージです。
 これから会社として考えないといけないことは、男性社員はとても育児休業出来ません、パート社員は低コスト、かつ期間雇用であれば期間満了で退職させられるから使いやすい、という発想では今後人の確保は出来ないという時代です。特に余剰人員が確保しづらい中小企業においてはかなり厳しい時代になりつつあります。いよいよ、採用すること・働き続けて貰うということが当たり前ではなくなってきました。

労務管理_石井氏

石井 洋(いしい ひろし)

M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 人事コンサルティング部 部長
長崎出身。九州大学卒業。社会保険労務士。フットワークが軽く、かゆいところに手の届くコンサルティングで、主に若い経営者からの人気を誇る。就業規則や人事考課制度の見直しから、スタッフミーティングの開催など、幅広いコンサルティングを行う。セミナー講師の経験も豊富で、その場のニーズに合わせた柔軟なセミナーを得意。趣味はバドミントン・フットサル・旅行。