コミュニケーションにかかわる人為的なミスをなくし、医療の安心・安全を守りましょう!
医療の安心や安全を「接遇」で守れるか?そんなことでできるわけないじゃない!という声が聞こえてきそうですが・・・様々な分野での連携に欠かせないのがコミュニケーション。そう考えてくると、全く関係がないわけではないですよね。
- 皆さんの医療機関でこんな経験ありませんか?
「私はこう伝えたはずなのに・・・」
「○○さんも、「ハイ、わかりました」って言っていたのに」
「いつもこうやってって言っているのに、なんでやらないの?」
これは、「伝わっているはず」「こんな風に言った(伝えた)つもり・・・」というコミュニケーションのまずさが引き起こす、「のにのに星人」の大発生です。これは早く対処しないといけません。何故なら、行く末は「くれない族」になってしまい暴走する可能性があるからです。
- コミュニケーションエラーとは・・・
コミュニケーションにかかわる人為的なミスのことを指します。つまり、コミュニケーション・・・伝達方法のまずさで、情報が正しく伝わらないことが原因で起こるミスのことです。
大きく分けて、❶ 発信側の問題と❷ 受信側の問題があると考えられます。
❶ 発信側の問題
いわゆる、「言ったつもり」なのだけれど、十分に情報の説明などがされておらず、結果伝わらない、というものです。
これは「伝わっているはず」「理解しているはず」という思い込みによる発信の不足が原因といえるかもしれません。また、共通認識ができていないところに、言葉の省略をしてしまうということが原因になる場合もあります。
❷ 受信側の問題
指示は出しているのだけれど、受信側がうまく聴き取れなかったり、曖昧なままに判断したりして、間違えた指示を実行してしまう場合です。
例えば、「薬の力価が違っていた」「薬品名を聞き間違えた」「違う患者のカルテを出した」というミスがあります。
過去の全国で起きた怖い事例から見ていくと、「タキソール」と「タキソテール」を聞き間違えて、死亡に至った事故事例も報告されています。他にも、インスリン「1単位」と「1筒」を聞き間違えて、急激に低血糖の発作が起こり意識障害になった事例、手術患者を取り違えて、健康な患部を切り取った事例など、大変な事故にも発展してしまいます。
- 対策①・・・共通言語を持つ
院内のルールとして、用語の定義を明確にして入職当初にきちんと説明しておくことも対策として大事になります。
例えば、先ほどの「タキソール」と「タキソテール」の場合だと、一般名を使用するとタキソールは「パクリタキセル」、タキソテールは「ドタキセル」と全く違う呼び方になります。院内で、共通ルールを作り、言葉をきちんと定義づけしておくということは大事なことだということはわかりますね。
医療機関で業務改善や新人教育、マニュアル作成する場合に、まず行うことの一つが、この「用語の統一化」です。使っている言語を合せていく、とても大事なことだと思います。
- 対策②・・・復誦する
接遇で、電話対応の場合など「必ず復誦しましょう」ということは幾度となく言われていると思います。復誦することは、ちゃんと聞いているよというメッセージとともに「あなたが話をしてくれた内容はこういうことですよね」と内容を確認することにあります。指示を受けたときに、メモを取りながら、「○○ですね」ということを声に出して言うことは、とても事故防止に有効だといわれています。
例えば、先ほどの二つ目の事例では「○○△△様に、インスリン1筒皮下注ですね」と復誦していれば、気づいた間違いかもしれません。手術患者の取り違え事例に関しても、フルネームを確認していれば気付いたことかもしれません。
この際に注意してほしいのは、指示を出した方の態度です。
イライラした表情や、間違えていた場合に「はあ??何言っているの!!!」という言葉や態度で対応してしまうと、「これでいいんだよね?自信ないなあ」と思っていても、聴けずに誤った指示を実行して事故になる、なんてことが起こるかもしれません。
皆さんの医療機関では、聴きやすい雰囲気ができていますか?
この取り組みは、きっと患者さんへの対応でも生かされてくると思いますよ。
長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。