身だしなみは、相手のために…患者様ファーストの視点で医療接遇に気を付けましょう!
「接遇」の中で、「身だしなみ」の重要性についてよく話に出てきます。
「身だしなみ」とは“相手に不快感を与えない清潔な服装や振る舞い”です。身だしなみを整えると表現されることが多く、服装や髪形などの身なりに注目されがちですが、身だしなみの中には、礼儀や作法も含まれてきます。
- 身だしなみの漢字表記は「身嗜み」
「嗜み」とは、好みや芸事などに関する心得という意味とともに、「慎み」や「普段の心がけ、節度」という意味もあります。
つまり、その役割に応じて節度を保って身支度をすることや礼儀・作法を守り、その場に応じた立ち居振る舞いも含まれた言葉です。
例えば、食後など人と会う前に歯磨きをすることや、寒い時期に玄関でコートを脱ぐこと、暑い時期には汗をかいたままにしないことなども含まれてきます。つまり、社会人として、相手に不快感を与えないふるまい方や心がけが大事になってくるのですね。
- 医療機関で求められる身だしなみ
社会一般的に、身だしなみの三原則は、❶清潔感、❷機能性、❸調和性、といわれています。
医療機関においても同じです。
❶ 清潔感
きれいに洗濯されているのは今や当たり前です。医療機関では、感染のこともありますので、清潔にすることは十分気を付けておられるでしょう。しかし、清潔にしていることと「清潔に見える」こととは別物です。つまり、第三者の視点を通し、清潔そうだなということを感じさせるということです。
具体的には、髪の毛やひげ・服装のシワや汚れ、身体の衛生面やにおい(香水などを含む)などが、身だしなみにおける清潔感を示すものになります。ぼさぼさの髪の毛や伸びっぱなしのひげ、洗いっぱなしの白衣など、はよろしくないですね。
❷ 機能性
どんなに清潔感を意識して身だしなみを整えたとしても、動きづらさがあると患者様のケアにおいて、相手に不快感を与える結果になりかねません。
例えば、ガウン型の白衣の場合、前のボタンをはずしたまま、裾をひらひらとなびかせ本人は颯爽と歩いているつもりでも、周りから見ると、衛生的にも機能的にも、疑問が残ります。看護職員や介護職員、リハビリスタッフをはじめとする医療スタッフなど、対患者様に直接対応する場合、動きやすさというものも大事になりますし、職責がわかることも大事になってくるかもしれません。
また、この機能性の中には、「安全性」「衛生面」を考慮したものである必要があります。
例えば、「安全性」・・・患者様の身体に触れることが多いため、危険要因となるようなアクセサリーや爪、持ち物なども、注意が必要です。
また、衛生面については、感染対策として、指輪や腕時計の着用、マスク等の着用、はもちろん、頭髪についても、まとめ、頻繁に触ることが無いような工夫が必要です。
❸ 調和性
「身だしなみ」と「おしゃれ」は違います。身だしなみは、相手のために行うもの(配慮・気遣い)で、「おしゃれ」は自分自身の満足のために行うものという違いがあります。
医療機関の職員として、適切であるかどうかは、とても重要になります。
ある医療機関に視察に行ったときに、手術室の看護師さんがアロハシャツで仕事をされていました。「自分が仕事を楽しむため」という説明でしたが、患者さんはどう感じられるでしょうか?
- 医療接遇における身だしなみチェックポイント
患者様やご家族様の安心・安全のために基準を設けておられる医療機関も増えてきています。ここでは一般的な事項として、見てみましょう。
前髪は目にかからないようにする。
肩につく長さはまとめる。
髪色はトーンを抑える。
ヘアアクセサリーは控える。
ナチュラルなものを心がける。
カラーコンタクトはしない。
男性の場合無精ひげはNG。
使用しない。ヘアコロンも同様。
短く整える。ネイルはしない。
シミやシワ、汚れが無いか?
下着が透けて見えないか?
ボタンをかける。
カーデガンの色は適切か?
ミュールタイプは禁止、汚れていないか、動きやすいもの。
基本身に着けない。
医療機関は、様々な方が来院されます。中でも患者様・ご家族様など、体調が悪い方が多くおこしになります。患者様ファーストの視点で医療接遇に気を付けていきましょう。
長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。