こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、令和8年9月2日に厚生労働省から出された「疑義解釈資料の送付について(その12)」の中から、クリニックでかなり判断に迷いやすいテーマを取り上げます。
それが、
「健診と保険診療を同じ日に行って、同じ採血で検査した場合、どこまで保険請求できるのか」
という問題です。
内科系クリニックでは、これは珍しい場面ではありませんよね。
たとえば、高血圧や糖尿病、脂質異常症で毎月通院している患者さんが、
「先生、今日は市の健診も一緒に受けたいです」
ということがあります。
健診でも採血をします。一方、糖尿病の管理でもHbA1cなどの検査を予定している。
では、採血を1回で済ませた場合、保険診療分の検査まで算定できないのでしょうか。
今回の疑義解釈で、この考え方がかなり整理されました。
基本は「健診として行ったものは保険請求しない」
まず大原則です。
健診の一環として血液を採取したのであれば、その採血手技について診断穿刺・検体採取料を保険請求することはできません。
さらに、その血液を使った検体検査実施料や検体検査判断料についても、原則として算定できないとされています。
ここだけ読むと、
「では、健診の日は検査を全部保険請求できないの?」
と思ってしまいます。
でも、そうではありません。
今回、とても大切な例外が明確に示されました。
「健診がなくても行う予定だった検査」なら算定できる
一つ目は、
健診を受けるかどうかにかかわらず、もともと保険診療として行う予定だった検査
です。
たとえば、糖尿病で継続診療中の患者さんについて、3か月ごとにHbA1cや腎機能などを確認しているとします。
たまたまその日が健診の日と重なった。
この場合、
「健診を受けなかったとしても、今日は糖尿病管理のためにこの検査をする予定だった」
のであれば、その検査については保険診療として算定できます。厚労省も、受診日前から診療している疾患について、継続的な疾病管理の一環としてあらかじめ予定していた検査を明示的に認めています。
ここが非常に重要です。
健診結果を見て「追加で必要」となった検査も対象
もう一つあります。
健診結果を確認した結果、
「この数値は放っておけない。治療方針を決めるために、さらに検査しましょう」
となった場合です。
このように、健診結果を踏まえて別途必要になった検査についても、保険診療として算定できます。
つまり、考え方としては、
「何のためにその検査をしたのか」
を分けることが大切なのです。
「同じ血を使ったか」より「検査目的」を見る
クリニックの現場では、
「採血は1回だから、どちらか一方しか請求できないのでは?」
と考えがちです。
でも、今回の疑義解釈を読むと、判断の中心はそこではありません。
大切なのは、
- 健診だから行った検査なのか
- 健診がなくても疾病管理上必要だった検査なのか
- 健診結果を受けて、新たに必要になった検査なのか
という診療上の位置づけです。
ですから、院内では「健診+保険診療」の患者さんを受付の段階で把握し、医師がどの検査を保険診療として行ったのか分かるようにしておくことをお勧めします。
カルテにも、
「糖尿病定期管理として本日HbA1c等を予定」
など、その日の検査目的が分かる記録があるとよいでしょう。
「全部健診」「全部保険」にしない
私が一番注意していただきたいのは、
一律処理をしないことです。
「健診の日だから検査は全部健診」
としてしまえば、本来算定できる検査を落としてしまいます。
逆に、
「いつもの患者さんだから全部保険」
としてしまえば、健診として実施した検査まで保険請求することになりかねません。
健診と保険診療が同居する日は、少し面倒です。
でも、だからこそ、
「検査ごとに、何を目的として行ったのか」
を整理する。
今回の疑義解釈その12は、この基本を改めて教えてくれたものだと思います。

