こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
令和8年度診療報酬改定で、クリニック経営の実務として見落としてほしくないものの一つがBCP、業務継続計画です。
特に、
機能強化加算
そして、
在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院
では、BCPの策定が重要な施設基準になりました。在支診・在支病については、令和8年度改定資料でも「業務継続計画の策定」が施設基準として明示されています。
そこで現場から出てくるのが、
「分かりました。でも、BCPって何から作ればいいんですか?」
という質問です。
今回の疑義解釈その12は、そこにかなり実務的な回答を示してくれました。
■日本医師会の診療所用BCPひな形を使ってよい
厚生労働省は従来、医療機関向けのBCP作成手引きなどを参考にすることを示していました。
ただ、診療所の立場からすると、
「資料が大きすぎて、どこから手を付ければいいのか分からない」
という声もあったと思います。
その12では、
日本医師会が作成した「診療所用業務継続計画(BCP)のひな形」を参考にしてよい
と明確にされました。
これは診療所にとってかなりありがたい整理です。
ただし、一つ注意してください。
「ひな形をダウンロードして保存すれば終わり」ではありません。
■自院の状況に書き換えることが必要
疑義解釈には、その続きがあります。
各医療機関や地域の特性、市町村の個別避難計画などを踏まえて、必要に応じて内容を追加・削除して記載すること。
そして、作成した計画を職員に適切に周知すること。
さらに、作成したBCPは定期的に更新することが望ましい、とされています。
ここが本質です。
BCPは「提出する書類」ではなく、
災害が起きたときに、本当に使えるもの
でなければ意味がありません。
■クリニックなら最低限ここを考える
私は、診療所でBCPを作るのであれば、難しく考えすぎず、まず次のようなことを具体的に決めてほしいと思っています。
地震や豪雨で停電したら診療を続けられるのか。
電子カルテが使えなかったらどうするのか。
電話がつながらなくなったら患者さんとどう連絡するのか。
院長先生がクリニックに来られない場合はどうするのか。
職員への連絡は誰がするのか。
医薬品や医療材料が届かなくなった場合はどうするのか。
そして在宅医療を行っているなら、
訪問診療中の患者さんを誰が、どの順番で確認するのか
まで考えておかなければなりません。
特に酸素療法、人工呼吸器、経管栄養などを利用している患者さんは、災害時の影響が大きくなります。
在宅医療のBCPは、単に「クリニックをどう再開するか」だけではないのです。
■常勤医師1名のクリニックほどBCPが大事
そして私は、常勤医師1名体制のクリニックほどBCPが重要だと思っています。
なぜなら、
院長先生に業務が集中しているからです。
院長先生が動けなければ診療が止まる。
事務長しか知らない仕事があれば、その人が不在になっただけで業務が止まる。
ですからBCPを作る過程で、
「この仕事、先生しか分からないですね」
「このパスワード、事務長しか知りませんね」
ということが見つかる。
私は、それだけでもBCPを作る価値があると思っています。
■作って終わりにしない
BCPを作ったら、受付の棚の奥に入れないでください。
少なくとも年に一度くらいは、
「大雨で停電したという想定で確認してみよう」
「院長が来られない場合はどうする?」
と職員で話してみる。
それだけでも全然違います。
令和8年度改定でBCPが診療報酬上の要件になったことを、
「また書類が一つ増えた」
と考えるのではなく、
「クリニックの弱いところを洗い出す機会になった」
と捉えていただきたいと思います。

