こんにちは。村上佳子です。
最終回です。
ここまで、生活習慣病管理料、特定疾患療養管理料、かかりつけ医機能、感染症対応、CPAPなどの在宅療養指導管理、紹介・連携と見てきました。
最後にお伝えしたいのは、
「全部覚えようとしないでください」
ということです。
診療報酬は複雑です。
しかも改定があります。疑義解釈も出ます。施設基準も変わります。
院長先生が診療しながら、「この患者さんはこれが算定できる」「この患者さんは今月2回目だから……」と全部頭の中で判断するのは無理があります。
医療事務スタッフも同じです。
だから、算定漏れ対策は「詳しい人を一人つくる」よりも、漏れを発見できる仕組みをつくることが重要です。
私は、毎月のレセプト点検を「患者条件」「実施した診療」「施設基準」「算定回数」「併算定・包括関係」「診療録記載」という6つの視点で見ることをおすすめします。
たとえば生活習慣病なら、
高血圧・糖尿病・脂質異常症の定期患者数に対して、生活習慣病管理料を何人算定しているか。
特定疾患なら、対象疾患を主病としている患者数に対して、特定疾患療養管理料を何人算定しているか。
CPAPなら、機器管理患者数と管理料算定患者数は合っているか。
発熱外来なら、発熱患者数と発熱患者等対応加算の算定件数に不自然な差がないか。
紹介状なら、発行件数と診療情報提供料の算定件数が合っているか。
こうやって、「算定できたかもしれない患者」を数字から絞り込んでいきます。
ここで大事なのは、自動的に請求するのではありません。
機械で候補を出して、最後は算定要件を確認する。
この順番です。
そうすると、毎月何百枚、何千枚ものカルテを最初から人が読み直す必要はありません。
さらに私は、施設基準については年に1回ではなく、少なくとも診療報酬改定時と、院内体制が変わったときには必ず棚卸しすることをおすすめします。
厚生労働省も令和8年度改定に際して、診療所向けの「施設基準届出チェックリスト」を用意しています。
これは、「届出を忘れて、本来受けられる評価を受けられない」という事態を防ぐことが目的です。(厚生局)
たとえば、
以前は医師数が足りなかった。
以前は対応できるスタッフがいなかった。
以前は連携先がなかった。
でも、今は体制が変わっている。
こういうことは珍しくありません。
ところが、誰も施設基準を見直していないと、数年前の「うちでは取れない」がそのまま院内の常識になってしまいます。
これが、私は一番もったいないと思います。
今回のシリーズでお伝えしたかったのは、単なる「増収テクニック」ではありません。
常勤医師1名体制の内科系クリニックでは、院長先生の診療時間には限界があります。
1日50人診ている先生に、
「もっと患者さんを増やしましょう」
と言っても、60人、70人と増やしていけば、いつか診療の質か院長先生の体力のどちらかに無理が出ます。
だから、患者数を増やす前に確認したいんです。
いま診ている患者さんに対して、行っている医療が正しく評価されているでしょうか。
必要な医学管理をしている。
感染対策をしている。
電話対応の体制を整えている。
専門医へ紹介している。
CPAPのデータを確認している。
生活習慣病の合併症予防まで考えている。
それなのに、診療報酬上は「再診料だけ」になっているのであれば、そこには見直す余地があります。
点数を取るために診療をするのではありません。
良い診療をしているのであれば、その診療を正しく記録し、正しく請求する。
これが一番大切です。
そして、その確認を院長先生個人の記憶ではなく、クリニックの仕組みにしていく。
それが、常勤医師1名体制でも無理なく続けられる「算定漏れ対策」だと思います。

