こんにちは。M&Cパートナーコンサルティングのパートナーコンサルタント、長幸美です。
カスハラ事案が起きた後で、院長から、
「受付は暴言を受けたと言っているけれど、実際に何を言われたのか分からない」
「患者さんと職員の説明が食い違っている」
「何度も電話があったようだが、記録が残っていない」
というお話を伺うことがあります。
カスハラ対応では、記録がとても重要です。
記録は患者さんを責めるためのものではありません。何が起きたのかを客観的に確認し、適切な対応を決め、職員を守るためのものです。
「怖かった」だけでなく、具体的な事実を残す
対応記録には、感想だけでなく、事実を残します。
最低限、次の内容を記録してください。
- 発生した日時と場所
- 対応した職員と同席者
- 患者さんや家族が求めていた内容
- 実際に使われた言葉や行為
- 医療機関側が行った説明
- 警告や対応終了を伝えた内容
- 他の患者さんや業務への影響
- 職員の負傷や体調への影響
- 録音、映像、目撃者の有無
「ひどい暴言を受けた」ではなく、
「○月○日午前10時15分、受付カウンターで『お前を辞めさせる』『家を調べる』と3回発言した」
というように残します。
職員が複数いる場合は、できるだけそれぞれから早い段階で状況を確認してください。
通話録音や防犯カメラをどう考えるか
厚生労働省のカスハラ対策では、事実確認や対応のために、やり取りの録音・録画を活用することも想定されています。可能な限り職員を一人で対応させないことと併せて、事前にルールを定めておくことが重要です。
録音や防犯カメラを導入する場合は、
「何のために記録するのか」
「誰が確認できるのか」
「いつまで保存するのか」
「どのような場合に警察や弁護士へ提供するのか」
を決めておきます。
院内掲示やプライバシーポリシーで、防犯、安全確保、トラブル発生時の事実確認などの利用目的を案内する方法も考えられます。
録音データを、職員が私物のスマートフォンに保存するような運用は避け、医療機関として管理してください。
診療録と対応記録を整理する
診療上重要な情報は、診療録に記載する必要があります。
一方で、電話を何分間受けたか、誰が管理者に報告したか、どのような警告を行ったかといった危機管理上の経緯は、院内の対応記録として整理しておくと、その後の検討がしやすくなります。
ただし、職員の感情に任せて、
「悪質患者」
「クレーマー」
「要注意人物」
とだけ記載するのは適切ではありません。
何があったのか、次回はどのように対応するのかを、客観的に記載します。
患者情報を共有する範囲も、業務上必要な職員に限定しましょう。
SNSや口コミには、その場で反論しない
職員を名指しした投稿や、事実と異なる口コミを見つけると、すぐに反論したくなるかもしれません。
しかし、医療機関側から個別の診療内容や患者さんとのやり取りを詳しく公開するのは避けるべきです。
まず、投稿画面、投稿日時、アカウント名、URLなどを保存します。
そのうえで、
- 投稿サイトに削除を申し立てる
- 脅迫や個人情報の掲載があれば警察に相談する
- 名誉や業務への重大な影響があれば弁護士に相談する
- 院内の個人情報流出がないか確認する
という順番で対応します。
口コミへの一般的な返信を行う場合も、
「ご不快な思いをされたことについては、お話を伺います。当院の相談窓口までご連絡ください」
など、個別事情を公開しない表現にとどめます。
カスハラ対策では、記録がなければ、管理者が適切な判断をしにくくなります。
「何か起きたら記録する」のではなく、誰が、どの様式で、いつまでに記録するかを決めておくことが大切です。
次回は、6回シリーズのまとめとして、小さなクリニックでも実行できる方針、マニュアル、研修の作り方をご説明します。

