こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、令和8年度診療報酬改定で新設された、腎代替療法診療体制充実加算についてお話しします。
この加算は20点です。
人工腎臓の点数が20点引き下げられた一方で、施設基準を満たして届出をすれば20点を加算できる仕組みになっています。令和8年6月1日の新設項目として、施設基準届出チェックリストにも掲載されています。
ですから、透析を行っている医療機関にとっては、かなり重要な加算です。
ただし、この加算は、単に「書類を出せば取れる加算」ではありません。
求められているのは、透析医療を安全に、継続的に、そして患者さんに選択肢を示しながら提供する体制です。
施設基準を見ていくと、まず災害対応があります。
透析医療は、災害に弱い医療です。
水が必要です。
電気が必要です。
機械が必要です。
通院手段も必要です。
災害が起きたときに、患者さんがどこで透析を受けるのか、医療機関同士でどう情報共有するのか、そこが非常に大事になります。
今回の施設基準では、ハザードマップにより自院の災害リスクを把握したうえで、災害対応マニュアルを作成することが求められています。
ここで大切なのは、マニュアルを「どこかのひな形を少し変えて置いておく」だけでは足りないということです。
自院が浸水リスクのある地域なのか。
土砂災害のリスクがあるのか。
停電時の対応はどうするのか。
患者さんへの連絡方法はどうするのか。
職員の参集ルールはどうするのか。
透析液、水、燃料、薬剤、食料、通信手段はどうするのか。
ここまで自院の実情に合わせて確認する必要があります。
もう1つ、災害時の情報伝達訓練への参加も求められています。
日本透析医会、日本透析医会支部、都道府県等による災害時の情報伝達訓練に年1回以上参加することが基準に入っています。
これは非常に実務的な要件です。
事務長さんとしては、
「いつ訓練があるのか」
「誰が参加するのか」
「参加記録をどこに保存するのか」
を決めておく必要があります。
次に、腎代替療法に関する説明体制です。
腎代替療法というと難しく聞こえますが、簡単に言えば、腎臓の働きが低下した患者さんに対して、血液透析、腹膜透析、腎移植などの選択肢を説明するということです。
今回の基準では、関係学会の作成した資料、またはそれを参考に作成した資料に基づき、患者さんごとの適応に応じて説明することが求められています。説明は導入期に限らず、患者さんの病状や求めに応じて繰り返し行うこととされています。
ここも大事です。
「透析導入のときに一度説明しました」で終わりではありません。
患者さんの状態が変わったとき。
家族の介護力が変わったとき。
通院が難しくなってきたとき。
患者さんから相談があったとき。
そうしたタイミングで、必要に応じて繰り返し説明することが求められています。
つまり、説明資料だけでなく、説明記録も必要です。
いつ、誰に、どの資料を使って、どのような内容を説明したのか。
患者さんや家族からどのような質問があったのか。
今後どのようにフォローするのか。
こうした記録を残す運用を作る必要があります。
さらに、シャントトラブル時の連携も求められます。
自院でシャント治療を行わない場合には、他の医療機関と事前に連携し、必要に応じて診療情報を提供できる体制が必要です。
透析施設では、シャントトラブルは日常的に起こり得ます。
だからこそ、
「どの病院に紹介するのか」
「夜間・休日はどうするのか」
「紹介状には何を書くのか」
「返書はどう管理するのか」
を決めておくことが大事です。
この加算は、20点の加算です。
しかし、その中身は、透析医療の安全管理、災害対応、患者説明、地域連携をまとめて整えるものです。
私は、今回の改定をきっかけに、透析施設の内部ルールを見直すことをおすすめします。
点数を取るためだけではありません。
災害時にも、急変時にも、患者さんに安心してもらえる透析医療を続けるための体制整備として、取り組むべき改定だと思います。

