こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
最終回は、令和8年度診療報酬改定を踏まえて、産科医療機関が院内で作成しておきたい「麻酔管理チェックリスト」についてお話しします。
ここまで、L001鎮静、L007深鎮静、L008閉鎖循環式全身麻酔、帝王切開の麻酔管理料について見てきました。共通しているのは、診療報酬上の区分を正しく判断するためには、臨床現場の記録と院内体制が不可欠だということです。
医事課だけで、麻酔の算定を正しく判断することはできません。
医師がどの麻酔を行ったのか。麻酔時間はどれくらいか。意識消失を伴ったのか。気道確保デバイスを使ったのか。麻酔に専従した医師がいたのか。麻酔科標榜医の関与はあったのか。これらの情報がそろって、はじめて算定判断ができます。
そこで、産科医療機関では、まず対象となる手術・処置を一覧にすることをお勧めします。
たとえば、流産手術、子宮内容除去術、胞状奇胎除去術、頸管縫縮術、帝王切開術などです。それぞれについて、通常どの麻酔方法を使うのか、例外的に深鎮静や全身麻酔に移行することがあるのかを確認します。
次に、麻酔ごとのチェック項目を決めます。
L001を想定する処置では、麻酔開始時刻、終了時刻、10分未満か10分以上20分未満か、使用薬剤、患者監視者を記録します。
L007を想定する処置では、20分以上かどうか、意識消失の有無、気道管理が必要な状態だったか、麻酔担当者が専従していたか、モニタリング内容、緊急時対応の準備を確認します。
L008を想定する手術では、声門上器具又は気管挿管による気道確保の有無、閉鎖循環式全身麻酔としての管理、麻酔困難な患者への該当性、麻酔開始・終了時刻を確認します。
帝王切開の麻酔管理料については、麻酔管理料の届出状況、麻酔担当医、麻酔前後の診察、帝王切開術時麻酔加算の要件確認、術前・術後記録を整理します。
ここで大事なのは、チェックリストを医事課用だけにしないことです。
診療報酬のチェックリストは、どうしても医事課が作るものと思われがちです。しかし、麻酔のチェックリストは、医療安全のチェックリストでもあります。産科医師、麻酔担当医、手術室看護師、助産師、医事課が一緒に使える形にすることが理想です。
たとえば、手術室で使う麻酔記録に、医事課が必要とする項目を追加する。あるいは、手術後に医事課へ渡す確認票を1枚作る。電子カルテであれば、麻酔区分を選択できるテンプレートを用意する。こうした工夫で、現場の負担を増やしすぎずに、記録の精度を上げることができます。
また、緊急時対応もチェックリストに入れておきましょう。
呼吸抑制が起きた場合、誰を呼ぶのか。気道確保器具はどこにあるのか。麻酔科医や応援医師への連絡手順はどうなっているのか。夜間・休日は誰が対応するのか。これらは算定のためだけでなく、産科救急の安全管理としても非常に重要です。
令和8年度改定は、産科の麻酔について、「点数を覚える」だけでは対応できません。
自院で実際に行っている麻酔を見える化し、算定区分と安全管理を結びつけることが必要です。これまで「いつもの静脈麻酔」「いつもの帝王切開麻酔」として扱っていたものを、時間、深度、気道確保、担当者、記録という視点で整理し直してください。
最後に、院内で最低限確認したい項目をまとめます。
対象手術・処置は何か。麻酔方法は何か。麻酔時間は何分か。意識消失を伴うか。気道確保デバイスを使用したか。麻酔担当者は誰か。専従性はあるか。麻酔科標榜医の関与はあるか。モニタリングは何を行ったか。急変時対応の準備はできているか。診療録・麻酔記録に残っているか。
このチェックリストを院内で共有できれば、令和8年度改定への対応は大きく前進します。
産科の麻酔は、母体と胎児の安全に直結する重要な領域です。診療報酬改定をきっかけに、算定、記録、安全管理を一体で見直していきましょう。

