あなたが現在見ているのは L008全身麻酔は「気道確保」がポイント――マスク管理との違いを誤解しない(第4回/全6回)

L008全身麻酔は「気道確保」がポイント――マスク管理との違いを誤解しない(第4回/全6回)

→目次に戻る

こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

第4回は、L008「声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔」についてお話しします。

今回の改定では、L008の名称が非常に重要です。これまでの感覚で「全身麻酔」と呼んでいたものでも、令和8年度改定後の点数表上は、声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔であることが明確になっています。

産科でL008が関係する代表的な場面は、帝王切開術や緊急手術で全身麻酔を行う場合です。

通常の帝王切開では、脊椎麻酔や硬膜外麻酔が多く用いられます。しかし、胎児機能不全、常位胎盤早期剥離、母体の状態悪化、区域麻酔が困難な場合など、緊急で全身麻酔を選択することがあります。このような場面では、気道確保、麻酔導入、維持、覚醒、術後管理まで、一連の管理が非常に重要になります。

ここで注意したいのは、「マスクで酸素を投与した」「静脈麻酔で眠らせた」というだけで、L008としてよいわけではないということです。

L008は、声門上器具又は気管挿管による気道確保を伴う閉鎖循環式全身麻酔として整理されています。つまり、気道確保デバイスの有無が、L007深鎮静との大きな分かれ目になります。

もちろん、実際の臨床では、患者さんの状態や緊急度に応じて、最も安全な方法が選択されます。診療報酬は臨床判断を縛るものではありません。しかし、算定の場面では、その臨床判断が記録として説明できる必要があります。

産科で特に重要なのは、緊急帝王切開時の記録です。

緊急手術では、現場が非常に慌ただしくなります。医師、助産師、看護師、麻酔担当者が同時に動き、胎児娩出までの時間を短縮することが優先されます。そのため、あとから医事課が確認しようとしても、麻酔方法、気道確保の方法、麻酔開始時刻、終了時刻、担当医が分からないということが起こりがちです。

しかし、L008を算定するのであれば、少なくとも、どの気道確保デバイスを使用したのか、気管挿管を行ったのか、声門上器具を使用したのか、閉鎖循環式全身麻酔として管理したのかを記録しておく必要があります。

また、麻酔困難な患者に該当するかどうか、腹腔鏡を用いた手術や側臥位での麻酔に該当するかどうかなど、L008の中でも区分が変わる場合があります。産科では多くの場合、帝王切開時の全身麻酔が中心になると思いますが、該当区分を医事課だけで判断せず、麻酔記録と手術記録を突き合わせて確認することが大切です。

今回の改定で、L008は「全身麻酔の評価」から一歩進んで、「気道確保デバイスを用いた全身麻酔の評価」としての性格が強くなりました。

産科医療機関では、緊急帝王切開時に全身麻酔へ移行する場面を想定し、次の点を事前に確認しておきましょう。

気管挿管や声門上器具を誰が実施するのか。必要な器具はどこにあるのか。麻酔記録は誰が記載するのか。術後に医事課へどの情報を渡すのか。緊急時の記録様式は実際に使えるものになっているのか。

L008は、算定のためだけでなく、産科救急の安全管理そのものに関わる区分です。

「緊急だったから記録できなかった」ではなく、「緊急だからこそ、最低限の記録項目をあらかじめ決めておく」。これが、産科における全身麻酔対応の実務ポイントです。

→目次に戻る