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BCPを作って終わりにしない――院内研修・訓練・見直し・記録管理の実務チェックリスト(第6回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

6回にわたって、令和8年度診療報酬改定に関連する医療機関のBCPについてお話ししてきました。

最終回の今回は、BCPを作って終わりにしないための実務チェックポイントを整理します。

BCP対応で一番避けたいのは、書類だけ作って、誰も中身を知らない状態です。

事務長さんが頑張って作った。
ファイルにきれいに綴じた。
院長先生の確認も受けた。
でも、受付も看護師も医事課も、どこにあるか知らない。
災害時に何をすればよいか分からない。

これでは、BCPとしては機能しません。

BCPは、作成、周知、訓練、見直し、記録管理までがセットです。

まず1つ目は、管理責任者を決めることです。

BCPは、誰が管理するのかを明確にしてください。

院長先生なのか。
事務長なのか。
看護師長なのか。
防災担当者なのか。
医療安全管理者なのか。

責任者が決まっていないと、作成後の見直しが止まります。

また、責任者だけでなく、代行者も決めておくことが大切です。

災害時に責任者が必ず院内にいるとは限りません。

責任者不在時には誰が判断するのか。
夜間や休日は誰が初動対応するのか。
院長先生と連絡が取れない場合、どこまで現場で判断できるのか。

この代行ルールが、非常時にはとても重要です。

2つ目は、職員への周知です。

BCPを作ったら、全職員に共有してください。

ここで大切なのは、全員に分厚いマニュアルを読ませることではありません。

職種ごとに、知っておくべき内容を分けることです。

受付は、患者さんへの案内、電話対応、予約変更、会計保留、情報発信を知っておく必要があります。

看護師は、トリアージ、患者対応、医療材料、感染対策、急変時対応を知っておく必要があります。

医事課は、資格確認、紙運用、会計、レセプトへの反映、記録の保管を知っておく必要があります。

訪問診療チームは、在宅患者の優先順位、訪問可否、連絡体制、薬局・訪問看護との連携を知っておく必要があります。

病院であれば、病棟、検査、放射線、薬剤、栄養、リハビリ、施設管理など、それぞれの部門で確認すべきことが違います。

BCP研修は、職員全員に同じ内容を説明するだけではなく、部門ごとの行動に落とし込むことが大切です。

3つ目は、訓練です。

訓練というと、大がかりな防災訓練をイメージするかもしれません。

もちろん、それも大切です。

ただ、BCPの訓練は、小さく始めることもできます。

例えば、電子カルテが使えない想定で、紙の診療録を使ってみる。
停電した想定で、非常用ライトや非常電源の場所を確認する。
台風で午後休診にする想定で、患者さんへの案内文を作ってみる。
職員安否確認の連絡を一斉に流してみる。
在宅患者の優先順位リストを使って、誰から連絡するか確認する。
救急外来で、トリアージから検査までの流れを机上で確認する。

これも立派なBCP訓練です。

むしろ、実務ではこうした小さな訓練の積み重ねが大切です。

訓練をすると、必ず気づきがあります。

紙の様式が足りない。
連絡先が古い。
職員が備蓄品の場所を知らない。
LINEで連絡するつもりだったが、全員が入っていなかった。
ホームページを更新できる人が限られていた。
在宅患者リストに医療機器情報が入っていなかった。
薬局の緊急連絡先が分からなかった。

こうした気づきを改善につなげることが、BCPの本質です。

4つ目は、定期的な見直しです。

BCPは、一度作ったら終わりではありません。

少なくとも年1回は見直すことをおすすめします。

また、次のようなときには随時見直しが必要です。

院長や管理者が変わったとき。
事務長や看護師長が変わったとき。
電子カルテや予約システムを変更したとき。
在宅患者数が増えたとき。
救急受入体制を変更したとき。
新しい施設基準を届け出たとき。
建物改修や移転をしたとき。
近隣の連携先が変わったとき。

医療機関の体制が変われば、BCPも変わります。

古いBCPは、非常時にはかえって混乱の原因になります。

5つ目は、記録管理です。

診療報酬の施設基準対応としても、実務上も、記録を残すことは非常に大切です。

BCPを策定した日。
見直した日。
見直しの内容。
院内研修を行った日。
参加者。
訓練を実施した日。
訓練の想定。
課題。
改善策。
次回確認事項。

これらを残しておきます。

特に、救急外来医学管理料に関連する病院では、BCPに基づく災害訓練を年1回以上実施することが重要になりますので、訓練記録は必ず整備しておきたいところです。

記録は、難しい様式でなくても構いません。

A4一枚の訓練記録表でもよいです。

大切なのは、後から見たときに、
「いつ」
「誰が」
「何を確認し」
「どんな課題があり」
「どう改善したか」
が分かることです。

最後に、院長先生や事務長さんにお伝えしたいことがあります。

BCPは、事務部門だけの仕事ではありません。

医療安全、感染対策、防災、在宅医療、救急、医事、システム、労務管理、地域連携がすべて関係します。

だからこそ、院内で小さなチームを作って進めることをおすすめします。

例えば、院長先生、事務長、看護師長、医事課、訪問診療担当、システム担当でBCPチームを作る。

病院であれば、救急、病棟、薬剤、検査、放射線、栄養、施設管理も加える。

そして、最初から完璧を目指さず、まずは自院にとって重要な非常時対応から整備していく。

これが現実的です。

BCPは、診療報酬改定に対応するためだけのものではありません。

患者さんを守るため。
職員を守るため。
地域医療を守るため。
そして、医療機関の経営を守るためのものです。

非常時に診療をどう続けるかを考えることは、平時の業務を見直すことにもつながります。

どの業務が重要なのか。
誰が判断しているのか。
情報はどこにあるのか。
属人化している業務はないか。
患者さんへの連絡手段は十分か。
システムが止まったときに代替手段はあるか。

BCPを作る過程で、こうした院内の課題が見えてきます。

それを一つずつ改善していくことが、結果として強い医療機関づくりにつながります。

第6回のまとめです。

BCPは、作成して終わりではありません。

周知し、訓練し、見直し、記録を残すことで、初めて実際に使える計画になります。

令和8年度診療報酬改定をきっかけに、ぜひ自院の診療継続体制を見直してみてください。

大切なのは、完璧なBCPを作ることではありません。

非常時に、職員が迷わず動けること。

患者さんに必要な医療をつなげること。

そのための第一歩として、まずは自院にとって一番大事な診療を守る計画から始めていただきたいと思います。

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