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クリニックのBCPは何を書けばよいのか――外来診療・職員参集・停電・電子カルテ停止への備え(第3回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、クリニック向けに、BCPには実際に何を書けばよいのかをお話しします。

クリニックの院長先生や事務長さんから、よく聞かれるのがこの質問です。

「BCPが必要なのは分かったけれど、具体的に何を書けばよいのでしょうか」

たしかに、病院向けのBCPをそのまま見ると、かなり大がかりです。

災害対策本部。
病棟運営。
手術室。
入院患者の避難。
非常電源。
給水。
医薬品備蓄。
多数傷病者の受入れ。

こうした項目を見ると、クリニックでは現実味がないと感じるかもしれません。

でも、クリニックのBCPは、病院と同じものを作る必要はありません。

クリニックには、クリニックのBCPがあります。

私は、クリニックのBCPでは、まず次の5つを決めることが大切だと思っています。

1つ目は、診療を続けるか、止めるかの判断基準です。

非常時に一番困るのは、「開けるのか、閉めるのか」が決まらないことです。

例えば、台風、大雪、地震、停電、断水、電子カルテ障害、職員の大量欠勤などが起きたとき、誰が診療可否を判断するのか。

院長先生なのか。
院長先生が不在の場合は副院長なのか。
事務長なのか。
看護師長なのか。

ここを決めておく必要があります。

また、完全に休診するのか、午前だけ診療するのか、予約患者のみ対応するのか、慢性疾患の処方だけ対応するのか、急患のみ対応するのか。

こうした段階的な対応も決めておくと、現場が迷いません。

2つ目は、職員の安否確認と出勤ルールです。

災害時には、職員自身や家族の安全が最優先です。

そのうえで、診療を継続するために、誰が出勤可能なのかを把握する必要があります。

連絡方法は電話なのか、LINEなのか、ビジネスチャットなのか。
連絡が取れない場合はどうするのか。
小さなお子さんがいる職員、公共交通機関で通勤している職員、遠方から通勤している職員への配慮はどうするのか。

こうしたことを決めておくことが大切です。

BCPというと患者対応ばかり考えがちですが、職員が安全に働けなければ診療は続けられません。

3つ目は、電子カルテ・レセコンが止まった場合の対応です。

これは、すべてのクリニックで考えておくべき重要項目です。

電子カルテが使えない。
予約システムが見られない。
オンライン資格確認ができない。
会計システムが動かない。
処方箋が発行できない。

こうしたことは、災害時だけでなく、システム障害でも起こります。

そのときに、紙で診療記録を残すのか。
保険証や資格確認はどう扱うのか。
処方箋は手書きで出せるのか。
会計は概算にするのか、後日精算にするのか。
復旧後に誰が入力するのか。

ここを決めておく必要があります。

特に、紙の様式は事前に準備しておくことをおすすめします。

非常時用の診療録メモ、処方メモ、会計保留リスト、予約変更リストなどを、紙で印刷してファイルに入れておくだけでも違います。

4つ目は、患者さんへの情報発信です。

災害時や台風時には、患者さんから電話が集中します。

「今日は開いていますか」
「予約はどうなりますか」
「薬だけもらえますか」
「検査はできますか」
「訪問診療は来てもらえますか」

こうした問い合わせに個別対応していると、受付がパンクしてしまいます。

そのため、ホームページ、LINE、SNS、院内掲示、電話自動応答など、どの手段で情報を出すのかを決めておくことが重要です。

例えば、
「本日は午前中のみ診療します」
「予約患者のみ対応します」
「慢性疾患の定期処方については電話でご相談ください」
「発熱外来は休止します」
「検査予約は後日変更の連絡をします」

こうした定型文を事前に作っておくと、非常時にすぐ使えます。

5つ目は、近隣医療機関や薬局との連携です。

クリニックだけで完結できない場面もあります。

自院が休診せざるを得ない場合、患者さんをどこに案内するのか。
院外処方の場合、薬局が開いているのか。
在宅患者の薬はどう届けるのか。
紹介先の病院は受入れ可能なのか。

非常時には、普段の連携先との関係が非常に大切になります。

BCPには、連携先の電話番号や連絡方法、災害時に相談する相手をまとめておくとよいです。

ここまで聞くと、
「やっぱり大変だな」
と思われるかもしれません。

でも、最初から完璧に作る必要はありません。

まずは、次のような簡単な表から始めてもよいのです。

想定される事態。
起こる問題。
優先する業務。
対応する人。
連絡方法。
必要な書類や備品。
復旧後にやること。

この表を、台風、停電、電子カルテ停止、職員欠勤、感染症流行などの場面ごとに作っていきます。

これだけでも、クリニックのBCPとしてかなり実用的になります。

大事なのは、実際に職員が見て動けることです。

分厚いマニュアルを作って、棚に置いて終わりでは意味がありません。

受付スタッフが見ても分かる。
看護師が見ても分かる。
院長先生が不在でも最低限の判断ができる。
新人職員でも、どこを見ればよいか分かる。

こういうBCPが、クリニックには向いています。

第3回のまとめです。

クリニックのBCPは、大病院のような重厚な計画でなくて構いません。

診療可否の判断、職員の安否確認、電子カルテ停止時の対応、患者への情報発信、連携先との連絡。

まずはこの5つを決めることから始めてください。

次回は、在宅医療を行う医療機関のBCPについて、在宅患者さんをどう守るかという視点でお話しします。

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