こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、令和8年度診療報酬改定におけるBCP対応について、どの医療機関が特に確認すべきなのかを整理します。
BCPという言葉だけを聞くと、
「病院全体の義務なのか」
「すべてのクリニックが対象なのか」
「うちも急いで作らないといけないのか」
と不安になるかもしれません。
まず大事なのは、自院の届出状況を確認することです。
今回、特に注意したいのは、次のような医療機関です。
1つ目は、機能強化加算を届け出ている診療所や200床未満の病院です。
機能強化加算は、かかりつけ医機能を評価する加算です。
地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料などと関係しながら、地域で包括的な診療を担う医療機関を評価する仕組みです。
令和8年度改定では、この機能強化加算の要件の中に、業務継続計画、つまりBCPの策定、必要な措置、定期的な見直しが入ってきています。
ここで大事なのは、単に「BCPという名前の書類があるか」ではありません。
計画を策定し、その計画に従って必要な措置を講じ、定期的に見直すことが求められています。
つまり、作成、実施、見直しまでがセットです。
2つ目は、在宅療養支援診療所、在宅療養支援病院です。
在宅医療は、災害時の影響が非常に大きい分野です。
在宅酸素、人工呼吸器、中心静脈栄養、経管栄養、寝たきりの患者さん、独居や老老介護の患者さんなど、災害時に支援が途切れると命や生活に直結する方がいます。
そのため、令和8年度改定では、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の施設基準にも、BCPの策定と定期的な見直しが関係してきます。
在支診、在支病を届け出ている医療機関は、特に「災害時に在宅患者をどう支えるか」という視点でBCPを作る必要があります。
3つ目は、救急外来医学管理料に関係する病院です。
救急医療を担う病院では、救急外来医学管理料の施設基準の中で、BCPを策定し、そのBCPに基づいた災害訓練を年1回以上実施することが示されています。
ここは、クリニックや在宅医療のBCPとは少し違います。
病院の場合は、救急外来、検査、画像診断、薬剤、病棟、手術室、地域の消防や医師会との連携など、院内外をまたいだ体制づくりが必要になります。
では、事務長さんは何から確認すればよいのでしょうか。
私は、まず「届出一覧」を見ることをおすすめします。
自院が現在届け出ている施設基準の一覧を確認してください。
機能強化加算を届け出ているか。
在宅療養支援診療所・病院の届出があるか。
救急外来医学管理料や関連する救急医療の評価を算定する可能性があるか。
ここをまず確認します。
次に、既に院内にある災害対応マニュアルや感染症対応マニュアルを確認します。
多くの医療機関では、まったく何もないわけではありません。
火災時の避難マニュアル。
停電時の対応。
感染症流行時の対応。
緊急連絡網。
職員の安否確認ルール。
非常用備蓄の一覧。
電子カルテ停止時の対応。
災害時の連絡先一覧。
こうした資料が、院内のどこかにあることが多いです。
ただし、問題は、それらがバラバラに存在していることです。
BCP策定では、ゼロからすべてを作る必要はありません。
既にあるマニュアルやルールを集めて、
「非常時に診療を継続するための計画」
として一本の流れに整理することが大切です。
ここで注意したいのは、BCPを総務部門や事務長だけで作らないことです。
もちろん、事務長さんが旗振り役になることは多いと思います。
ただ、実際に動くのは、医師、看護師、受付、医事課、薬剤部、検査、放射線、リハビリ、栄養、訪問診療チームなど、現場の職員です。
現場を入れずに作ったBCPは、非常時に使えません。
例えば、
「電子カルテが止まったら紙で対応する」
と書いたとしても、紙の様式がどこにあるのか、誰が記録するのか、会計やレセプトにどう反映するのかが決まっていなければ、現場は動けません。
「訪問診療の患者に連絡する」
と書いたとしても、優先順位が決まっていなければ、誰から連絡するのかで迷います。
「災害訓練を実施する」
と書いたとしても、何を想定した訓練なのか、誰が参加するのか、記録をどう残すのかが決まっていなければ、施設基準対応としても不十分になります。
BCP対応で大切なのは、次の3段階です。
まず、自院が対象となる施設基準を確認すること。
次に、既にある院内ルールやマニュアルを棚卸しすること。
最後に、足りない部分を現場と一緒に埋めていくこと。
この順番で進めると、無理なく対応できます。
第2回のまとめです。
BCP対応は、すべての医療機関が同じ内容で行うものではありません。
機能強化加算を届け出ている医療機関、在宅療養支援診療所・病院、救急医療を担う病院では、それぞれ求められる視点が異なります。
だからこそ、まずは自院の届出状況を確認してください。
次回は、クリニック向けに、外来診療を止めないためのBCPで何を決めておくべきかを具体的にお話しします。

