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令和8年度改定で、なぜ医療機関によりBCP(業務継続計画)が求められるのか――「災害対策」ではなく「診療を止めない体制づくり」として考える(第1回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、令和8年度診療報酬改定に関連して、医療機関におけるBCP、つまり業務継続計画についてお話しします。

BCPと聞くと、少し大げさに感じる先生や事務長さんもいらっしゃるかもしれません。

「うちは災害拠点病院ではないから関係ない」
「大きな病院が作るものでしょう」
「クリニックでBCPと言われても、何を書けばよいのか分からない」

このように感じるのは、自然なことだと思います。

ただ、今回の令和8年度診療報酬改定では、BCPが一部の施設基準に関係するテーマとして、かなり現実的なものになってきました。

特に関係するのが、機能強化加算、在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院、そして救急外来医学管理料などです。

つまり、BCPは「災害が起きたときのために、念のため作っておく書類」ではなくなってきています。

これからは、かかりつけ医機能を担う医療機関、在宅医療を担う医療機関、地域の救急を担う医療機関にとって、診療報酬上の体制整備ともつながるテーマになってきた、ということです。

では、そもそもBCPとは何でしょうか。

BCPは、Business Continuity Planの略です。日本語では、業務継続計画といいます。

医療機関に置き換えると、私はこう考えると分かりやすいと思っています。

「非常時に、すべての診療を通常どおり行うための計画」ではありません。

そうではなく、
「非常時に、何を優先して続けるのか」
「何を一時的に止めるのか」
「誰が判断するのか」
「職員や患者さんにどう伝えるのか」
をあらかじめ決めておくものです。

ここが大事です。

BCPは、立派な冊子を作ることが目的ではありません。

停電したとき。
電子カルテが使えなくなったとき。
大雨や地震で職員が出勤できないとき。
院長先生がすぐに来院できないとき。
訪問診療の患者さんと連絡が取れないとき。
救急外来に患者さんが集中したとき。

こうした場面で、院内が混乱しないようにするための「判断の地図」です。

ですから、医療機関のBCPでは、まず「自院にとって止めてはいけない業務は何か」を考える必要があります。

クリニックであれば、外来診療、慢性疾患の処方、予約患者への連絡、発熱患者や急変患者への対応、電子カルテ・レセコンの復旧、薬局や近隣病院との連携などが考えられます。

在宅医療を行っている医療機関であれば、訪問診療の継続、医療依存度の高い患者さんの優先順位、訪問看護ステーションや薬局、ケアマネジャーとの連絡体制が重要になります。

病院であれば、救急受入れ、入院患者の安全確保、病棟の人員配置、非常電源、水、食料、医薬品、検査・画像・手術の継続可否などが論点になります。

つまり、BCPは医療機関ごとに中身が違います。

テンプレートをそのまま埋めれば終わり、というものではありません。

もちろん、最初から完璧なものを作る必要はありません。

むしろ、最初から立派なものを作ろうとすると、現場で使えないBCPになりがちです。

私がまずおすすめしたいのは、次の3つを院内で話し合うことです。

1つ目は、災害時や非常時に「絶対に止めたくない診療」は何か。

2つ目は、その診療を続けるために「最低限必要な人・物・情報」は何か。

3つ目は、それが足りないときに「誰が、どの順番で判断するのか」。

この3つを整理するだけでも、BCPの土台になります。

例えば、電子カルテが止まったとき、紙カルテで仮運用するのか。
処方はどう出すのか。
会計は後日精算にするのか。
予約患者には誰が連絡するのか。
電話がつながらない場合はホームページやSNSで案内するのか。

こうしたことは、平時に決めておかないと、非常時にはなかなか判断できません。

医療機関は、地域の患者さんにとって「困ったときに頼る場所」です。

特に、かかりつけのクリニックや在宅医療を担う医療機関は、災害時にも患者さんや家族から連絡が来る可能性があります。

そのときに、
「今日は診療できます」
「午前中は慢性疾患の処方のみ対応します」
「緊急の方はこの病院に連絡してください」
「在宅酸素の方から優先して確認します」
といった判断ができる体制があるかどうか。

ここが、これから問われていくところだと思います。

令和8年度改定でBCPが施設基準に入ってきたことは、医療機関にとって負担に見えるかもしれません。

しかし、私はこれは、院内の業務を見直すよい機会でもあると思っています。

災害時のためだけではありません。

職員の急な欠勤。
システム障害。
感染症の流行。
院長先生の体調不良。
大雨や台風による交通機関の停止。

こうした「小さな非常時」は、どの医療機関でも起こり得ます。

BCPを作るということは、そうした場面でも診療を完全に止めないために、院内のルールを見える化することです。

第1回のまとめです。

BCPは、災害対策の書類ではありません。
医療機関が、非常時に何を優先して守るのかを決めるための計画です。

そして令和8年度改定では、その考え方が一部の施設基準にも入ってきました。

次回は、自院がBCP対応の対象になるのか、機能強化加算、在宅療養支援診療所・病院、救急外来医学管理料との関係を整理していきます。

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