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まず何から始めるか――目的・体制づくりとリスクアセスメントの進め方(第3回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、在宅医療に取り組む医療機関がBCPを作成するとき、まず何から始めればよいのかについてお話しします。

BCP作成というと、最初から分厚い計画書を作らなければいけないと思われるかもしれません。

でも、最初にやるべきことは、実はとても基本的なことです。

まず、「何のためにBCPを作るのか」を明確にすることです。

これは、単なる建前ではありません。

たとえば、自院のBCPの目的を、次のように整理してみます。

患者さんの命と生活を守る。

スタッフの安全と生活を守る。

災害時にも、優先すべき在宅医療を可能な限り継続する。

自院だけで対応できない場合には、地域の医療・介護・行政と連携して、患者さんへの支援を途切れさせない。

このように目的を言葉にしておくことが大切です。

目的が曖昧なままでは、災害時の判断がぶれます。

「どこまで頑張るのか」

「何を優先するのか」

「どの段階で外部支援を求めるのか」

こうした判断の土台になるのが、BCPの基本方針です。

次に、体制づくりです。

BCPは、院長先生だけで作るものではありません。

もちろん、最終的な判断責任は院長先生や管理者にあります。

しかし、実際に災害時に動くのは、医師だけではありません。

看護師、事務職、相談員、ドライバー、連携担当者など、在宅医療に関わる全員です。

そのため、誰がBCPの責任者なのか。

院長先生が不在のとき、誰が代行するのか。

緊急時の連絡は誰が発信するのか。

患者さんへの連絡は誰が担当するのか。

外部機関との連絡窓口は誰か。

こうした役割を、平時から決めておく必要があります。

特に小規模な診療所では、「院長先生しか判断できない」という体制になりがちです。

しかし、災害時には、院長先生自身が被災する可能性もあります。

連絡が取れない可能性もあります。

だからこそ、代行者を決めておくことが重要です。

次に行うのが、リスクアセスメントです。

リスクアセスメントとは、自院にとって、どのようなリスクがあり、その影響がどれくらい大きいかを確認する作業です。

ここで大切なのは、一般論ではなく、自院の地域と患者層に合わせて考えることです。

自院の訪問エリアに、浸水想定区域はあるか。

土砂災害警戒区域はあるか。

地震のリスクはどうか。

豪雨のときに通行止めになりやすい道路はどこか。

スタッフの自宅は、災害時に出勤できる場所にあるか。

診療所の建物は停電や断水にどこまで耐えられるか。

電子カルテやレセコンは、停電時や通信障害時にどうなるか。

こうしたことを、一つずつ確認していきます。

在宅医療では、患者さん側のリスクも重要です。

人工呼吸器、在宅酸素、吸引器、輸液ポンプなど、電源を必要とする医療機器を使っている患者さんは誰か。

独居の方は誰か。

認知症があり、自分で避難判断が難しい方は誰か。

家族の支援が少ない方は誰か。

要介護度が高く、移動が困難な方は誰か。

災害時に薬剤が切れると危険な方は誰か。

これらをリスト化しておくことが、在宅医療BCPの出発点になります。

ただし、ここで注意したいのは、「全部を完璧に把握しなければ始められない」と考えないことです。

まずは、現在わかっている情報で構いません。

訪問診療の患者一覧を見ながら、災害時に優先確認が必要な患者さんを抽出する。

訪問看護やケアマネジャーと、支援が必要な患者さんについて情報をすり合わせる。

これだけでも、大きな一歩です。

BCP作成の第一段階では、難しい文書を作るよりも、まず自院の現実を見える化することが大切です。

自院の強みは何か。

弱点は何か。

患者さんの中で、災害時に特に注意が必要な方は誰か。

スタッフ体制のどこにリスクがあるか。

地域の誰と連携できるか。

これらを整理することが、BCPの土台になります。

院長先生や事務長さんには、ぜひスタッフを巻き込んで話し合っていただきたいと思います。

訪問スタッフは、患者さんの生活環境をよく知っています。

事務スタッフは、連絡先や請求、システム、物品管理の実務を知っています。

相談員は、家族や地域資源との関係を把握しています。

BCPは、現場の知恵を集めて作るものです。

次回は、BCP作成の中でも特に重要な「業務の優先順位づけ」についてお話しします。

災害時に全部は続けられません。

だからこそ、何を続け、何を縮小し、何を一時的に止めるのかを、平時に決めておく必要があります。

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