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全部は続けられない――在宅医療の優先業務をどう決めるか(第4回/全6回)

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こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、在宅医療BCPの中でも非常に重要な「業務の優先順位づけ」についてお話しします。

災害時に一番避けたいのは、何も決めていないまま、その場その場で判断してしまうことです。

もちろん、有事には想定外のことが起こります。

ただし、基本的な考え方を平時に決めておかなければ、現場の判断がばらばらになってしまいます。

在宅医療で特に大切なのは、「全部をいつも通り続けることはできない」という前提に立つことです。

これは、決して後ろ向きな考え方ではありません。

限られた人員と資源の中で、本当に守るべき医療を守るために、あえて優先順位をつけるということです。

厚生労働省の手引きでは、業務影響分析、いわゆるBIAという考え方が示されています。

簡単に言えば、日常業務を棚卸しして、重要な業務を選び、その業務を続けるために何がボトルネックになるかを考える作業です。

では、在宅医療を提供する医療機関では、どのように考えればよいでしょうか。

まず、日常業務を洗い出します。

定期訪問診療。

往診。

臨時訪問。

看取り対応。

電話相談。

処方。

検査。

外来診療。

訪問看護との連絡。

ケアマネジャーとの連携。

患者さんやご家族への連絡。

診療記録。

請求業務。

物品管理。

会議やカンファレンス。

研修。

こうした業務を、まず一覧にします。

そのうえで、災害時にも優先して続ける業務、縮小する業務、一時的に中断する業務に分類します。

たとえば、緊急往診や看取り対応は、優先度が高い業務です。

人工呼吸器や在宅酸素など、生命維持に直結する医療機器を使用している患者さんへの対応も優先度が高くなります。

状態が不安定な患者さん、独居で支援が少ない患者さん、薬剤管理が難しい患者さんも、優先確認が必要です。

一方で、状態が安定している患者さんの定期訪問は、災害時には一時的に頻度を落とすことが考えられます。

電話確認やオンライン診療に切り替えることもあるでしょう。

外来診療も、通常通りの予約外来をすべて続けるのではなく、緊急性の高い患者さんを優先し、安定している患者さんには長期処方や予約変更で対応することが考えられます。

会議、研修、委員会、通常時のカンファレンスなどは、一時的に中断する判断も必要です。

ここで大切なのは、業務だけではなく、患者さんの優先順位も整理することです。

在宅患者さんを、災害時の支援必要度に応じて分類しておく。

たとえば、最優先で安否確認が必要な患者さん。

状況に応じて早期確認が必要な患者さん。

電話確認で対応できる可能性がある患者さん。

しばらく訪問間隔を空けても比較的リスクが低い患者さん。

こうした分類をしておくと、発災時の対応が大きく変わります。

ただし、患者さんに順位をつけるということに、心理的な抵抗を感じる方もいるかもしれません。

でも、これは患者さんを差別する話ではありません。

限られた時間と人員の中で、命に関わるリスクが高い方から支援を届けるための整理です。

むしろ、平時に決めておかないと、本当に支援が必要な患者さんへの対応が遅れる可能性があります。

もう一つ重要なのが、ボトルネックの確認です。

優先業務を続けるためには、何が必要か。

医師が必要なのか。

看護師が必要なのか。

車が必要なのか。

ガソリンが必要なのか。

スマートフォンが必要なのか。

電子カルテが必要なのか。

紙の記録用紙があれば代替できるのか。

薬剤や衛生材料はどれくらい必要なのか。

こうした資源を確認します。

たとえば、電子カルテが使えない場合、紙で記録する様式はあるでしょうか。

訪問後に紙記録をどう電子カルテへ反映するか、決まっているでしょうか。

電話が使えない場合、別の連絡手段はあるでしょうか。

スタッフが出勤できない場合、誰が代行できるでしょうか。

このように、優先業務と必要資源をセットで考えることが大切です。

在宅医療BCPでは、「何をするか」だけでなく、「何をしないか」も決める必要があります。

ここが実務上、とても重要です。

頑張れば何とかなる、という発想だけでは、スタッフが疲弊します。

結果として、本当に必要な医療まで提供できなくなることがあります。

災害時に守るべき業務を守るためには、縮小する業務、一時的に止める業務を明確にする。

そして、その判断をスタッフ全員で共有する。

これがBCPの実効性につながります。

次回は、被害のレベルに応じて、自院で対応するのか、外部支援を頼むのか、他機関に引き継ぐのかという「業務継続戦略」についてお話しします。

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