こんにちは。村上佳子です。
今回は、令和8年度診療報酬改定における生活習慣病管理料の見直しの中でも、特に重要なポイントである「充実管理加算」についてお話しします。
これまでのコラムでは、生活習慣病管理料の包括範囲の見直しや、医科・歯科・眼科との連携、療養計画書の考え方について整理してきました。
今回の「充実管理加算」は、そうした一連の見直しの中でも、かなり大きな意味を持つ改定です。
一言でいうと、これまでのように「データを提出できる体制があること」だけを評価する時代から、「提出されたデータをもとに、どのような診療が行われ、その結果がどうだったか」を評価する時代へ移っていく、ということです。
これは、単なる加算の新設ではありません。生活習慣病管理料そのものが、外来診療の質をデータで見ていく仕組みへ進んでいる、と考えた方がよいと思います。
■外来データ提出加算は廃止され、充実管理加算へ
まず、制度の変更点を確認しておきましょう。
生活習慣病管理料において、これまで算定されていた外来データ提出加算50点は廃止されます。その代わりに、診療実績、つまりアウトカムに基づいて3段階で評価する充実管理加算が新設されました。点数は、充実管理加算1が30点、充実管理加算2が20点、充実管理加算3が10点です。
ここだけを見ると、「50点だったものが、30点・20点・10点になるのか」と感じるかもしれません。特に、これまで外来データ提出加算を算定していた医療機関にとっては、点数だけを見れば引き下げに見える部分もあります。
ただ、今回の改定で大切なのは、点数の増減だけではありません。
評価の考え方そのものが変わっている、ということです。
これまでの外来データ提出加算は、どちらかというと、データを提出できる体制があることを評価する加算でした。もちろん、データ提出体制を整えること自体も簡単ではありません。対象データを正しく作成し、エラーを確認し、期限までに提出する体制を作ることは、医療機関にとって大きな負担です。
しかし、今回の充実管理加算では、そこからさらに一歩進みます。
「データを出せますね」だけではなく、そのデータから見て、どのような診療が行われ、どのような結果が出ているのかが見られるようになります。元記事でも、外来データ提出加算はプロセス評価であったのに対し、充実管理加算は提出データに基づいて診療内容や結果、つまりアウトカムを評価する仕組みに移行していると整理されています。
■充実管理加算は「上位評価」と考える
私は、この充実管理加算は、単なる点数項目というより、生活習慣病管理料の上位評価と考えると分かりやすいと思います。
生活習慣病管理料そのものは、患者さんの生活習慣に関する総合的な治療管理を評価する点数です。
ただ、その管理が本当に質の高いものになっているかどうかは、これまで外からは見えにくい面がありました。
たとえば、患者さんに療養計画を説明しているか。必要な検査を定期的に行っているか。生活習慣への介入ができているか。ガイドラインに沿った診療が行われているか。フォローが継続しているか。
こうしたことは、医療機関の中では日々行われていても、制度上はなかなか評価しにくい部分でした。
今回の充実管理加算は、そこをデータで見ようとするものです。
もちろん、データだけで診療のすべてが分かるわけではありません。患者さんの生活背景や、通院継続の難しさ、地域性、年齢層、合併症の状況など、数字だけでは見えないものもたくさんあります。
それでも、制度としては、外来慢性期医療についても「データに基づいて評価する」方向がはっきり示されています。元記事でも、生活習慣病管理料について、「管理していること」から「どのような管理が行われているか」をデータで可視化し、評価する方向へ大きく舵が切られたとされています。
■加算1・2・3は、どう分かれるのか
充実管理加算は、3段階で評価されます。
充実管理加算1は30点、充実管理加算2は20点、充実管理加算3は10点です。
この区分の考え方も、今回の加算の特徴です。
充実管理加算1は、充実管理加算の届出を行う保険医療機関全体のうち上位20%。充実管理加算2は上位50%。充実管理加算3は、加算1・加算2以外とされています。
ここで注意したいのは、これは医療機関が自分で「うちは加算1です」と判断するものではない、ということです。
提出されたデータをもとに、厚生労働省、具体的には保険局医療課が集計・分析し、所定の集計期間ごとに評価される仕組みとされています。
つまり、日々の診療の中でリアルタイムに「今月は加算1です」と分かるものではありません。一定期間のデータを提出し、その結果として評価区分が決まる、という流れになります。
この点は、経営上も実務上も大事です。
「要件を満たせば必ず30点が取れる」というものではなく、相対評価によって区分が決まるため、最終的にどの区分になるかは、提出データと全体の中での位置づけによって変わります。
■何をすれば上位に入れるのか
ここで、院長先生や事務長さんが一番気になるのは、やはりこの点だと思います。
「では、何をすれば上位20%に入れるのですか?」
「HbA1cを何%以下にすればよいのですか?」
「血圧や脂質の数値に明確な基準があるのですか?」
こうした疑問が出てくるのは自然です。
ただ、現時点では、たとえば「HbA1cが何%以下なら加算1」といった、分かりやすい数値基準が明示されているわけではありません。
通知上は、ガイドラインに沿った診療、適切な検査実施、継続的なフォロー、生活習慣への介入といった質の高い管理が前提とされています。しかし、具体的な数値基準が明示されていないため、「このラインを超えれば加算1になる」という単純な目標設定は難しいのが実情です。
ですから、現場としては、近道を探すよりも、まずは基本に戻ることが大切です。
患者さんを継続的に診ているか。必要な検査を適切なタイミングで行っているか。検査結果をもとに療養計画を見直しているか。患者さんへの説明や生活習慣への介入ができているか。眼科・歯科など、必要な連携につなげられているか。
こうした、いわば当たり前の診療の積み重ねが、結果として評価につながっていくと考えるべきです。
■データ提出は「入口」、診療の質が「中身」
ここで誤解しないでいただきたいのは、充実管理加算は「データ提出加算の名前が変わっただけ」ではない、ということです。
データ提出は、あくまで入口です。
確かに、データを提出しなければ評価の土台に乗れません。提出データにエラーがあったり、継続的な提出ができなかったりすれば、そもそも評価につながりません。
その意味では、医事課や事務部門の役割はとても大きくなります。
一方で、データを出すだけでは十分ではありません。
そのデータの中身に、日々の診療が表れます。
たとえば、検査が適切に行われているか。患者さんが継続してフォローされているか。診療内容がガイドラインに沿っているか。療養計画が形だけになっていないか。
そうした日常診療の積み重ねが、データとして外に出ていくことになります。
つまり、充実管理加算に対応するには、医事課だけが頑張ればよいわけではありません。院長先生、看護師、管理栄養士、医事課スタッフが、それぞれの役割を理解し、生活習慣病管理の流れを院内で整えていく必要があります。
■院内でまず確認したいこと
充実管理加算を意識するうえで、まず院内で確認したいのは、次のような点です。
生活習慣病管理料を算定している患者さんの一覧を把握できているか。
疾患別に、糖尿病、高血圧症、脂質異常症の患者さんの管理状況を確認できるか。
検査の実施時期や結果が、診療の見直しにつながっているか。
療養計画や生活指導が、診療録上も分かる形で整理されているか。
データ提出の担当者、確認者、提出期限の管理方法が決まっているか。
このあたりが曖昧なままだと、充実管理加算への対応はかなり不安定になります。
逆に、生活習慣病管理の患者さんをきちんと把握し、診療の流れを整理し、データ提出の体制を作っていけば、充実管理加算への対応だけでなく、外来診療全体の質の見直しにもつながります。
■今回のポイント
充実管理加算は、従来の外来データ提出加算に代わる新しい加算です。
ただし、単なる名称変更ではありません。これまでの「データを提出できる体制」の評価から、提出データをもとにした生活習慣病管理の質の評価へと軸が変わっています。
加算1・2・3は、届出医療機関全体の中での相対評価によって区分されるため、「要件を満たせば必ず加算1」というものではありません。
現場としては、まずデータ提出を確実に継続できる体制を整えること。そして、ガイドラインに沿った診療、適切な検査、継続的なフォロー、生活習慣への介入といった基本的な管理を、日々の診療の中で丁寧に積み上げることが大切です。
次回は、充実管理加算を実際に取得するかどうかを考えるうえで重要になる、届出スケジュールとクリニック経営の判断ポイントについてお話しします。

