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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.33 誠実な人とは…?

自分の都合を主張しすぎず 冷静に行動をすることが 誠実さの元にもなる

 皆さん「誠実な人」と聞いてどう感じられますか?
 ウソをつかない人? まじめな人? 医療機関で仕事をしている中で、「専門職」として「どうあるべきか」「どのように行動すべきか」ということを考えていくと、専門的な医療技能と医療倫理に基づいて、誠実に職務を遂行することは極めて大事なことと感じられる方が多いのではないかと思います。

 「誠実」という言葉を辞書で調べると、「私利私欲を交えず、真心をもって人や物事に対すること」「ウソ偽りがないこと」と記載されています。つまり、たとえ誰に見られていなくても、誰に対しても、変わらず対応できる人ではないでしょうか? これは、コミュニケーションの原点・・・真正面からその人を受入れ、誠意をもって対応すること、相手の立場や感情に左右されず、真心をもって対応すること・・・と言えるのではないでしょうか。

 皆さんのこれまでの失敗はどのようなものがありますか? あまり思い出したくないですよね?
 私も23年の病院勤務の中では、いろいろなことがありました。
 その中でも、医師から「出ていけ」といわれたことが最大の失敗だったと思います。
 レセプトを作成する中で、術後にMAPやFFP、血小板製剤、グロブリン製剤など、ありとあらゆる血液製剤を使用している患者さんがいました。かなり状態が悪い患者さんで、そのレセプトに症状詳記を依頼した担当者が、医師から「俺は知らん」といわれ、押し問答になりどうしたらいいのかと相談にきたのです。日ごろから事務作業には非協力的な医師でしたし、「あ~また始まった」という思いがありました。

 私は急いでカルテとレセプトの内容を確認し、医師のもとに急ぎました。そして話を始めたのですが、・・・その際の医師の反応に対し、「そうですか・・・」と相槌をうったのですが、医師はその私の心の声を敏感に感じ取ってしまったのです。そして医師から出てきた言葉は「俺は忙しい、出ていけ!」。
 周りの看護師や患者さんが凍り付いたのは言うまでもありません。

 医療事務の職員は、先生方・看護師さんをはじめ医療職の方々が行った医療行為を適切に請求し、病院の収益を確保することが仕事です。他の医療職の方々と同様にプライドを持って仕事をしています。
 それと同じくらい大事な仕事に、「潤滑油であること」・・・つまり、医療職が専門性を最大限に発揮できるようにするため、医療職と医療職や患者さん、地域をつないでいく役割も持っているのが事務職員です。さて、前述の私の対応は適切だったのでしょうか?

 職業倫理とは、特定の職業にある人や団体が自らの職業の社会的責任を果たすために、専門職者としてどうあるべきか、どう行動すべきかを明文化したものです。その中で、相手の信条や社会的立場等を踏まえ、相手を尊重して公平・中立な立場で対応することが大事になってきます。

 私たちは事務職員とはいえ、仕事に対し、誇りをもっています。
 一方、医療の現場では、目の前の患者さんの対応をはじめ、緊急手術や緊急対応等・・・、事務職員の時間軸では判断できないものもあります。忙しい先生方や看護師の隙間時間に声をかけることもあるでしょう。それはどのような医療機関でも同じですね。仮に、レセプトの締め切り等の事情があったとしても、また医師側にカルテ記載等の不適切な対応があったとしても、診療中にずかずかと踏み込んでいけば、先生だけではなく、患者さんも不愉快な思いを抱くのではないでしょうか。

 一呼吸おいて、何が問題なのか、それは急がないといけないことなのか、他に方法はないのか・・・ということを考えること、整理をすることが必要でしょう。実は、これはアンガーマネジメントの考え方にも通じるものがあります。
 医療現場には様々な専門職の方がいらっしゃいます。それぞれに時間軸も大事にしていることも違います。自分自身の都合を主張しすぎず、冷静に行動をすることが、この誠実さの元にもなるように思います。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。