あなたが現在見ているのは いきなり大きくしない――リハビリ部門を1年間で育てるロードマップ(第8回/全8回)

いきなり大きくしない――リハビリ部門を1年間で育てるロードマップ(第8回/全8回)

→目次に戻る

ここまで読んで、

「結構やることがありますね」

と思われた先生や事務長さんもいらっしゃると思います。

地域ニーズを調べる。

施設基準を確認する。

診療の流れを整える。

採用と収支を考える。

病院と連携する。

介護ともつながる。

全部を一度にやろうとしたら大変です。

だから最終回で一番お伝えしたいのは、

「いきなり大きくしなくていい」

ということです。

常勤医師1名のクリニックだからこそ、

小さく始めて、数字と現場を確認しながら育てる。

これが大切です。

最初の3か月――自院の現在地を知る

最初にやるのは採用ではありません。

まず、

リハビリ患者数。

新規患者数。

初回までの待ち日数。

PT1人当たりの実施単位数。

キャンセル率。

リハビリを提案したけれど開始できなかった患者数。

途中で中断した患者数。

主な疾患や年齢層。

紹介患者数。

こうしたものを確認します。

全部を精密に分析する必要はありません。

「今、どこが詰まっているのか」

を知ることが目的です。

そして地域も見ます。

病院は何に困っているのか。

ケアマネジャーは何に困っているのか。

近隣のリハビリ資源は足りているのか。

そのうえで、

「自院は地域で何を担うのか」

を決めます。

4~6か月目――診療の流れを整える

方向が決まったら、次に運用です。

診察からリハビリへどうつなぐか。

PTから医師へ何を報告するか。

どういう変化があれば診察へ戻すか。

いつ再評価するか。

どのような状態になれば終了や次のサービスへの移行を考えるか。

これを整理します。

できれば、A4一枚くらいの簡単なフロー図にしてください。

難しいマニュアルは必要ありません。

患者さんの流れを全職員が理解していること

が重要です。

この時期には、週1回15分程度の短いミーティングも始めたいところです。

7~9か月目――必要なら、ここで初めて増員する

運用を整えても、

「新規患者を断っている」

「初回予約が取れない」

「病院からの紹介を受けられない」

のであれば、そこで増員を考えます。

この段階なら、

「忙しいからPTが欲しい」

ではありません。

「これだけの地域需要があり、現在の体制ではこれだけ受け入れられていない」

と説明できます。

これは採用にも大切です。

応募してきたPTに、

「患者さんが多いから来てください」

ではなく、

「私たちは地域の術後患者さんをしっかり支えられるクリニックをつくりたい」

と説明できます。

人材採用は、人数合わせではありません。

自院が目指すリハビリ部門を一緒につくる人を採ること

です。

10~12か月目――地域との接点を広げる

内部の体制が整ったら、外へ広げていきます。

近隣病院へ、

「こういう患者さんを受け入れています」

と伝える。

紹介された患者さんの経過を返す。

ケアマネジャーと情報交換する。

通所・訪問リハの事業所と関係をつくる。

ここまで来ると、

「自院のリハビリ室をどうするか」から、「地域全体で患者さんをどう支えるか」

という視点に変わってきます。

そこで本当に地域サービスが不足しているのであれば、次年度以降に新たな事業を考えてもよいでしょう。

逆に、良い地域資源があるなら、自院で抱える必要はありません。

売上だけをKPIにしない

毎月確認してほしい数字もあります。

例えば、

初回までの待ち日数。新規リハビリ患者数。PT1人当たりの実施量。キャンセル率。紹介患者数。患者さんの目標達成。リハビリ部門の収支。院長・職員の残業や負担。

です。

売上が増えていても、院長が疲弊している。

PTの残業が増えている。

患者さんの初回予約が1か月先。

これでは良い成長ではありません。

反対に、

患者さんを早く受け入れられるようになった。

紹介が増えた。

患者さんの生活機能が改善した。

院長への突発的な相談が減った。

職員が働きやすくなった。

そして収支も安定している。

そこまでそろって初めて、

「リハビリ部門が成長した」

と言えるのではないでしょうか。

最後に

このシリーズでは、

「PTを何人採用するか」

という話から始めませんでした。

地域で何が不足しているのか。

自院は何を担うのか。

医師1名でも回る仕組みをどうつくるのか。

必要な人材と収支はどう考えるのか。

病院や介護とどうつながるのか。

そこまで考えて初めて、リハビリ部門の拡大が経営戦略になります。

目指したいのは、

大きなリハビリ室ではありません。

地域の患者さんが必要とする支援を、無理なく、継続して提供できるリハビリ部門です。

常勤医師1名の整形外科だからこそ、何でもやる必要はありません。

自院が本当に担うべき役割を決める。

その役割を少しずつ磨いていく。

それが、地域から選ばれる整形外科クリニックへの一番確かな道だと思います。

第8回 いきなり大きくしない――リハビリ部門を1年間で育てるロードマップの漫画

→目次に戻る

文責:株式会社M&Cパートナーコンサルティング

作成日:2026年9月21日

本コラムの内容は、作成日時点の法令・通知・事務連絡等をもとにしています。その後の改正や疑義解釈、追加通知等により、取扱いが変更されている場合がありますので、最新情報もあわせてご確認ください。