グローバルな経営戦略の潮流を分析した論考が、2026年に入って相次いで発表されています。その内容を介護・医療経営の文脈に引き寄せると、現場が直面している課題と驚くほど重なります。
第一に、競争優位性の賞味期限が短くなっているという指摘があります。介護業界に置き換えれば、特定のサービス形態や加算への依存が、次の報酬改定や制度変更によって一夜にして無効化されるリスクです。「この強みをどう守るか」ではなく「いつ手放すべきかをどう判断するか」という問いが、経営者に突きつけられています。
第二に、外部の不確実性は内部の結束によってのみ対処できるという視点です。人手不足・物価高騰・制度改正が同時並行で押し寄せる状況の中、部門間の連携が取れず情報が分断された組織は、小さなショックでも大きなダメージを受けます。現場と管理部門、多職種間の整合性がとれているかどうかが、経営の安定性を左右します。
第三に、バーンアウトが組織の経営リスクになっているという点は、介護現場にそのまま当てはまります。離職や公然とした不満としてではなく、意思決定の回避・動きはするが勢いのないチーム・判断の先送りという形で静かに進行するこの問題は、「対処できるよう個人を支援する」のではなく「何がパフォーマンスを持続不可能にしているのかをシステムとして問い直す」視点で取り組まなければ解決しません。
第四に、テクノロジーが進めば進むほど人間の存在が差別化要因になるという逆説は、介護の本質と一致しています。自動化できない信頼・判断・共感こそが価値を生む領域であり、ICT導入の目的はその領域に人間が集中できる時間をつくることです。
これらは海外の経営トレンドの話として読み流せるものではありません。制度・人材・テクノロジーの三つが同時に変化する今、自施設の経営の前提を問い直す機会として受け取ることが求められています。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。
