愛知県医労連が2025年12月から2026年1月にかけて県内の医療・介護・福祉職1,456人を対象に実施したアンケートで、注目すべき結果が明らかになりました。「仕事を辞めたいと思うことがある」と答えた割合は64.8%に上り、看護職に限ると約74%に達しています。そしてその離職意向の理由として最も多く挙げられたのが、「カスハラを含む患者・家族からのクレーム」で30.5%と、「人手不足で仕事がきつい」や「賃金・一時金が少ない」を上回りトップとなりました。
4年前の同種調査では「人手不足で仕事がきつい」が離職理由のトップで、患者・家族からのクレームは最も低い項目でした。この短期間での逆転は、カスハラが急速に深刻化していることを示しています。現場の声としては、一対一になりやすい訪問系では「理不尽な要求を断れない」「休日でも電話がかかってくる」という訴えが多く、介護現場では認知症利用者からの暴力や性的行為の強要なども報告されています。人手不足で対応に余裕がない状況がカスハラをさらに深刻化させるという悪循環も指摘されています。
制度面では、愛知県が2025年10月にカスハラ防止条例を施行し、カスハラを明確に禁止する規定を設けました。また2026年10月からは国の法改正により、すべての事業主にカスハラ防止措置が義務化されます。しかし愛知県医労連は2026年4月の記者会見で県に緊急要請を提出し、条例への罰則追加や実効性のある対策を求めるなど、制度の整備だけでは現場の実態に追いついていないという声は根強く残っています。
全国的な調査でも、医療・介護職のカスハラ経験率は25〜44%前後と高く、カスハラがある職場では離職意向がさらに高まる傾向が確認されています。カスハラ対策は職員を守るための倫理的な取り組みであると同時に、人材確保と定着に直結する経営課題です。2026年10月の義務化を前に、自施設における対応方針と相談体制の整備を改めて点検しておく必要があります。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。
