みなさん、こんにちは。
M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
第2回は、医師事務作業補助者の業務範囲についてお話しします。
医師事務作業補助体制加算を考えるうえで、ここはとても重要です。
なぜなら、ICTを活用するといっても、そもそも医師事務作業補助者が担ってよい業務でなければ、加算上の医師事務業務とは整理しにくいからです。
今回の改定では、医師事務作業補助者が実施可能な業務範囲が、より具体的に示されています。基本は、医師の指示の下で行う業務です。ここが出発点です。
具体的には、診断書、診療情報提供書、返信、診療サマリー、診療計画書等の文書作成補助が挙げられています。
また、診療記録、検査オーダー、食事オーダー、クリニカルパス、地域連携パスへの代行入力も対象として整理されています。
このあたりは、現場でも比較的イメージしやすいと思います。
たとえば、医師が診察や回診で話した内容をもとに、医師事務作業補助者が診療録の下書きをする。検査オーダーの入力を補助する。退院時要約のたたき台を作る。紹介状の文案を作る。
こういった業務です。
さらに、患者さんやご家族への説明文書の準備・作成、診療録や画像検査結果等の整理、診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査・入力作業、教育や研修・カンファレンスの準備作業なども示されています。
つまり、医師事務作業補助者の業務は、単なる「入力係」ではありません。
医師の診療を支える文書作成、記録整理、説明準備、データ整理など、かなり広い範囲に及びます。
ただし、ここで注意が必要です。
「事務」と名がつくからといって、何でも医師事務作業補助者の業務になるわけではありません。
医師以外の職種の指示の下に行う業務、診療報酬の請求事務、DPCコーディング、窓口・受付業務、医療機関の経営・運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助、物品運搬業務などは、医師事務作業補助者の業務とはしないこととされています。
ここは、医療機関で混同されやすいところです。
たとえば、医事課が忙しいから、レセプト点検を手伝ってもらう。
受付が混んでいるから、外来受付に入ってもらう。
病棟が忙しいから、物品を運んでもらう。
看護師の補助的な業務をしてもらう。
これらは、現場感覚としては「助かる業務」かもしれません。
しかし、医師事務作業補助体制加算の趣旨から見ると、医師の事務負担軽減とは別の業務です。
ここを曖昧にしたままICTを入れると、何が起きるでしょうか。
たとえば、RPAを使って何かを自動化したとしても、その対象業務が医師事務作業補助者の本来業務から外れていれば、加算の趣旨に沿ったICT活用とは言いにくくなります。
生成AIを使って文書を作る場合も同じです。
何の文書を、誰の指示で、どの範囲まで作るのか。
医師が確認するのか。
医師事務作業補助者は下書きなのか、転記なのか、整理なのか。
最終責任はどこにあるのか。
ここを明確にしておく必要があります。
私が医療機関におすすめしたいのは、まず業務棚卸し表を作ることです。
列はシンプルで構いません。
業務名。
現在の担当者。
医師の指示の有無。
医師事務作業補助者が担えるか。
ICT化できるか。
医師の負担軽減につながるか。
運用ルールが必要か。
これだけでも、かなり整理できます。
そして、医師事務作業補助者の業務として整理できるものについて、文書作成、代行入力、説明準備、データ整理、行政入力などに分類していきます。
ここまでできると、次にICTを入れる場所が見えてきます。
生成AIは、文書作成補助に向いています。
音声入力は、診療録やサマリー作成に向いています。
RPAは、定型的な入力作業に向いています。
患者向け説明動画は、説明の標準化と医師の説明負担軽減に向いています。
ICT活用の前提は、業務範囲の整理です。
「何を任せてよいか」が曖昧なままでは、「何をICT化するか」も曖昧になります。
第3回では、いよいよ生成AIについてお話しします。
退院時要約、診断書、紹介状などの原案作成を、どのように実務に落とし込むかを考えていきます。

