こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
5回にわたって、令和8年度診療報酬改定における地域包括診療加算・地域包括診療料の見直しについてお話ししてきました。
最終回の今回は、先生方が自院で何を確認すればよいか、実務のチェックポイントとして整理します。
まず、今回の改定で新設される大きな項目が、外来データ提出加算です。
地域包括診療加算・地域包括診療料について、データに基づく適切な評価を推進する観点から、診療報酬の請求状況や治療管理の状況など、診療内容に関するデータを継続して厚生労働省に提出している場合に、月1回10点を算定できる評価が設けられます。
この外来データ提出加算は、届出を出せば翌日からすぐ算定できる、というものではありません。
まず様式7の10を提出し、その後、試行データを作成します。試行データはチェックプログラムでエラーチェックを行い、提出ファイルを作成して、指定された期限までに提出します。試行データが適切に作成・提出された場合、データ提出の実績が認められ、その後、様式7の11を地方厚生局へ届け出ます。届出が受理されてから算定開始、という流れになります。
つまり、外来データ提出加算は、レセコンや電子カルテ、院内のデータ管理と深く関係します。
先生ご自身が細かいファイル仕様まで把握する必要はありませんが、事務担当者、ベンダー、医事会計担当と早めに確認しておくことが大切です。
特に、今後は生活習慣病管理料や機能強化加算など、外来医療の評価でもデータ提出が重視される流れが続くと考えられます。
「10点だから、そこまでしなくてもよい」と見るか、「今後の外来評価に備えて、データ提出体制を整える機会」と見るかで、取り組み方は変わります。
次に、医師配置要件の確認です。
地域包括診療加算・地域包括診療料では、時間外対応加算の届出、または医師配置に関する要件が関係します。今回の改定では、医療資源の少ない地域に所在する診療所について、常勤換算2名以上の医師配置要件が1.4名以上に緩和される場合があります。
すべての診療所に適用されるわけではありませんので、自院が該当地域に所在するかどうか、施設基準上の扱いを確認する必要があります。
地方や中山間地域では、常勤医師を2名確保することが難しい医療機関もあります。今回の見直しは、そうした地域でも慢性疾患を有する患者さんへの継続的・全人的な医療を評価しようという方向性だと考えられます。
そして、最終的に大切なのは、院内運用です。
地域包括診療加算・地域包括診療料は、届出をして終わりではありません。実際に、継続的な医学管理、服薬管理、他医療機関の受診状況の把握、専門医療機関への紹介、介護・福祉サービスとの連携、認知症患者さんへの診断後支援、残薬確認などが求められます。
ここで、院長先生に確認していただきたいチェックポイントを整理します。
まず1つ目は、対象患者の把握です。
高血圧症、糖尿病、脂質異常症、慢性心不全、慢性腎臓病、認知症の病名が正しく整理されているか。6疾病のうち2疾病以上を有する患者さんだけでなく、慢性疾患を1つ有し、介護給付または予防給付を受けている要介護・要支援の患者さんを拾えているかを確認します。
2つ目は、介護情報の把握です。
介護認定の有無、介護サービス利用の有無、ケアマネジャーの有無、地域包括支援センターとの関係を、どこに記録するか決めておく必要があります。
3つ目は、認知症患者さんへの対応です。
認知症の診断や疑いのある患者さんについて、地域包括支援センター、認知症地域支援推進員、若年性認知症支援コーディネーターなど、地域の支援先を案内できる状態になっているかを確認します。
4つ目は、服薬管理です。
お薬手帳を確認しているか。他院処方を把握しているか。残薬を確認しているか。必要に応じて薬局や他医療機関と情報共有しているか。電子処方箋の活用可能性も含めて、院内フローを確認します。
5つ目は、連携薬局と院内処方体制です。
連携薬局の24時間対応体制を確認することが基本です。一方で、緊急時に必要な解熱鎮痛剤等を院内処方できる体制を整える場合には、その薬剤管理、期限管理、処方手順、スタッフへの周知まで整理しておく必要があります。
6つ目は、データ提出です。
外来データ提出加算を算定する場合、届出スケジュール、試行データ作成、チェックプログラム、ベンダー対応、担当者の役割分担を早めに確認します。
7つ目は、診療録記載です。
実際に対応していても、診療録に残っていなければ、後から説明できません。介護情報、服薬確認、残薬確認、他院との情報共有、認知症支援先の案内など、必要な事項をどのように記載するか、定型文やテンプレートを整えておくとよいでしょう。
今回の改定は、地域包括診療加算・地域包括診療料を算定している医療機関だけでなく、今後かかりつけ医機能を強化したいクリニックにとっても重要です。
高齢の慢性疾患患者さんを、医療だけでなく、介護、服薬、認知症支援まで含めて支えることが求められています。
そのためには、院長先生だけが頑張るのではなく、院内全体で情報を拾い、記録し、共有する仕組みが必要です。
令和8年改定をきっかけに、自院の地域包括診療の体制を一度棚卸ししてみてください。
点数対応としてだけではなく、患者さんの生活を支える外来づくりとして取り組むことが、これからのクリニック経営にもつながると思います。

