こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。
今回は、令和8年度診療報酬改定における地域包括診療加算・地域包括診療料の見直しのうち、「服薬管理」についてお話しします。
地域包括診療加算・地域包括診療料では、もともと服薬管理が重要な要件になっています。
慢性疾患を複数持つ患者さん、高齢の患者さん、認知症の患者さんでは、複数の医療機関に通院し、薬も多くなりがちです。薬の飲み残し、重複投薬、相互作用、睡眠薬や抗不安薬の使いすぎなど、外来管理の中で注意すべき点は少なくありません。
今回の改定では、この服薬管理に関して、いくつか重要な見直しが行われています。
まず1つ目は、連携薬局の要件の見直しです。
院外処方を行う場合、従来は、調剤について24時間対応できる体制を整えている薬局と連携していることが求められていました。
改定後も、連携薬局は原則として24時間対応できる体制を整えている薬局であることが基本です。
ただし、医療機関側で、緊急時に処方が必要となる解熱鎮痛剤等を院内処方できる体制が整備されている場合には、その連携薬局について、24時間対応できる体制が整備されていなくても差し支えないとされました。
これは、地域によっては24時間対応薬局との連携が難しいケースがあることに配慮した見直しといえます。
ただし、ここで大事なのは「薬局の24時間対応がなくてもよくなった」と単純に考えないことです。
あくまで、緊急時に必要となる薬剤を院内処方できる体制がある場合の扱いです。自院としてどの薬剤を院内に置くのか、誰が管理するのか、期限管理をどうするのか、夜間や休日の連絡体制をどうするのかまで、運用を確認しておく必要があります。
2つ目は、残薬確認の明確化です。
改定では、診療の際、患者さんのご自宅における残薬を確認したうえで、適切な服薬管理を行うことが要件とされています。
「薬は余っていませんか」と一言聞くだけでは、実際には十分でない場合もあります。
患者さんによっては、残薬があっても「余っていない」と答えたり、薬袋を複数持っていたり、他院処方の薬を一緒に飲んでいたりします。
実務としては、受付や看護師さんの声かけが大切です。
たとえば、定期受診の前に「お薬手帳をお持ちください」「残っている薬があれば持ってきてください」と案内する。診察前の問診で、飲み忘れや残薬の有無を確認する。薬剤が多い患者さんでは、薬局からの情報提供も活用する。
こうした小さな運用の積み重ねが、服薬管理の質につながります。
3つ目は、電子処方箋システムの活用です。
改定では、算定患者さんへの処方薬を把握し管理する手段の一つとして、電子処方箋システムの活用が含まれることが明確化されています。
もちろん、電子処方箋を導入すれば自動的にすべて解決するわけではありません。
ただ、今後は、薬剤情報を医療機関や薬局の間で共有し、重複投薬や多剤投与を減らす方向がさらに進むと考えられます。
4つ目は、薬剤適正使用連携加算の見直しです。
これまでは、他の保険医療機関に入院した患者さんや、介護老人保健施設に入所した患者さんを中心に、退院・退所後の処方内容を確認し、薬剤数が減少した場合に評価される仕組みでした。
改定後は、他の医療機関の外来に継続的に通院している患者さんも対象に加わります。
つまり、たとえば自院では高血圧や糖尿病を診ていて、他院では整形外科や精神科、循環器内科などに通院している患者さんについて、処方内容や薬歴をもとに他医療機関へ相談・提案を行い、薬剤数が減少した場合にも評価の対象になり得るということです。
これは、クリニックにとっては実務負担もありますが、同時に、かかりつけ医としての役割を示しやすい部分でもあります。
患者さんの薬全体を見て、「これは重複していないか」「長く続いているが必要性はどうか」「眠剤が増えすぎていないか」と確認し、必要に応じて他院や薬局と連携する。
この動きが、診療報酬上もより評価される方向になっています。
先生方におすすめしたいのは、服薬管理の院内フローを一度見直すことです。
お薬手帳は誰が確認するのか。残薬は誰が聞くのか。他院処方はどこに記録するのか。薬局からの情報提供は誰が見るのか。医師が他院へ情報提供や相談を行った場合、診療録にどう残すのか。
ここが曖昧なままだと、実際には対応していても、算定や監査の場面で説明しにくくなります。
服薬管理は、医師だけの業務ではありません。
受付、看護師、事務、薬局がそれぞれ少しずつ関わることで、患者さんの薬の全体像が見えてきます。
今回の改定を機に、ぜひ「残薬確認」「他院処方の把握」「薬局連携」「電子処方箋の活用」を、自院の慢性疾患管理の中に組み込んでいただきたいと思います。

