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これからの開業戦略――開業地選定、資金計画、地域連携をどう見直すか(第5回/全5回)

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こんにちは。M&C Partners Consulting代表の村上佳子です。

5回にわたって、令和8年度診療報酬改定に関連する「外来医師過多区域と新規開業への影響」についてお話ししてきました。

最終回の今回は、先生方が実際にどう対応すべきかを、開業戦略の視点で整理します。

まず確認したいのは、開業予定地です。

これから新規開業を考える先生は、候補物件を見る前に、その地域が外来医師過多区域に該当するのかを確認してください。

特に都市部、駅前、人口密集地、医療機関が集中しているエリアでは、従来以上に注意が必要です。

外来医師過多区域は、二次医療圏単位だけでなく、地域の実情によっては市区町村単位や地区単位で指定される可能性もあります。

そのため、「この県は大丈夫」「この医療圏なら大丈夫」と大まかに判断するのではなく、候補地ごとに確認することが大切です。

次に、地域で不足している医療機能を確認します。

都道府県は、外来医師過多区域や地域で不足している医療機能、医師不足地域での医療提供の内容について、地域の外来医療の協議の場での議論を踏まえて事前に公表することとされています。

つまり、開業前に確認すべき情報は、単なる人口統計や競合情報だけではありません。

その地域では、夜間・休日の初期救急が不足しているのか。
在宅医療が不足しているのか。
学校医、予防接種、産業医などの公衆衛生分野が不足しているのか。
医師不足地域への代診協力が求められているのか。

こうした情報を確認したうえで、自院がどこまで関われるかを考えます。

3つ目は、診療コンセプトの見直しです。

これからの開業では、
「どの診療科で開業するか」
「どの患者層をターゲットにするか」
だけでは足りません。

そこに、
「地域のどの課題を引き受けるのか」
という視点を加える必要があります。

たとえば、内科であれば、生活習慣病管理と在宅への接続。
小児科であれば、予防接種、乳幼児健診、休日診療への協力。
整形外科であれば、高齢者の運動器疾患、介護予防、外傷対応。
耳鼻科であれば、学校健診や小児の急性疾患対応。
精神科・心療内科であれば、産業保健や復職支援。

このように、自院の専門性と地域ニーズを重ねて考えることが大切です。

4つ目は、資金計画です。

外来医師過多区域での新規開業では、金融機関に提出する事業計画にも、地域医療への関与方針を入れておくことをおすすめします。

従来の事業計画では、診療圏人口、患者数予測、診療単価、売上、利益、借入返済が中心でした。

もちろん、それは今後も必要です。

ただ、それに加えて、
「行政・医師会との協議状況」
「地域で不足する医療機能への協力方針」
「将来的に算定を目指す診療報酬項目」
「在宅医療や休日診療への段階的な対応方針」
を記載しておくと、計画に厚みが出ます。

特に、機能強化加算、地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅療養支援診療所の届出を将来的に考える場合は、外来医師過多区域での要請対応が重要になります。要請に応じず保険医療機関の指定が3年以内とされた医療機関では、これらの算定や届出が不可となるためです。

5つ目は、行政・医師会・地域医療機関との関係づくりです。

開業前は、どうしても内装、機器、採用、広告、電子カルテなど、院内準備に目が向きます。

しかし、これからは院外との関係づくりも重要です。

都道府県の担当部署。
保健所。
地域医師会。
近隣病院。
訪問看護ステーション。
薬局。
地域包括支援センター。
介護事業所。

こうした関係者と、開業前から少しずつ接点を作っておくことが、開業後の安定につながります。

特に、在宅医療や地域包括ケアに関わる場合は、医療機関だけでは完結しません。

看護、介護、薬局、行政との連携が必要です。

これを開業後にゼロから始めるのは大変です。

最後に、既存クリニックの先生に向けてもお伝えしたいことがあります。

今回の制度は、新規開業への影響が中心です。

しかし、国の方向性としては、外来医療の機能分化、かかりつけ医機能、在宅医療、地域連携を重視する流れがより明確になっています。

令和10年度診療報酬改定に向けても、医師多数区域でのさらなる診療報酬上のディスインセンティブ措置のあり方などについて結論を得ることが示されています。

つまり、今回の改定で終わりではありません。

むしろ、ここから数年かけて、クリニックの地域での役割がさらに問われていくと考えた方がよいと思います。

では、先生方は何をすればよいのでしょうか。

難しく考えすぎる必要はありません。

まずは、自院について、次のことを確認してください。

自院は、地域でどの患者さんを支えているのか。
地域の病院や介護事業所と、どのようにつながっているのか。
夜間・休日、在宅、公衆衛生のうち、どこなら協力できるのか。
今後、どの診療報酬項目を算定していきたいのか。
そのために、今から整えるべき体制は何か。

外来医師過多区域という制度は、先生方にとって負担に感じられる面もあると思います。

ただ、見方を変えると、これはクリニックの役割を地域に示す機会でもあります。

これからのクリニック経営では、単に「患者さんに来てもらう」だけではなく、
地域の中で必要とされる機能を持つこと
が、経営の安定にもつながります。

開業地を選ぶ。
診療内容を決める。
加算を設計する。
地域連携を作る。
行政や医師会と関係を築く。

これらを別々に考えるのではなく、ひとつの開業戦略として組み立てることが大切です。

令和8年度改定をきっかけに、ぜひ先生方には、自院の地域での立ち位置を見直していただきたいと思います。

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