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なぜ今、身体抑制対応が入院基本料通則の重要テーマになったのか

こんにちは。M&Cパートナーコンサルティング代表の村上佳子です。

今回は、令和8年度診療報酬改定で見直される「身体的拘束最小化」について、200床未満の病院の皆さまに向けてお話しします。

病院の現場では、「身体抑制」と呼ばれることが多いと思います。点滴を抜いてしまう、転倒の危険がある、興奮が強い、認知症がある、夜間せん妄がある。こうした場面で、患者さんの安全を守るために、やむを得ず身体的拘束を行ってきた病院も少なくないと思います。

ただ、今回の改定で大事なのは、「身体抑制を絶対にしてはいけない」という単純な話ではありません。

大事なのは、身体的拘束を「必要なときに、必要最小限に、そして解除に向けて常に見直す」仕組みを、病院全体で持っているかどうかです。

令和6年度改定では、入院料の通則に身体的拘束最小化の基準が入りました。令和8年度改定では、その基準がさらに整理され、令和6年度改定で設けられた部分は「体制に係る基準」と位置づけられ、新たに「実績等に係る基準」が設けられます。体制はあるが実績等を満たせない場合は、入院料等を1日につき20点減算する仕組みも示されています。

200床未満の病院では、地域包括ケア病棟、療養病棟、地域一般病棟などで、高齢患者さん、認知症のある患者さん、転倒リスクの高い患者さんを多く受け入れています。ですから、「身体的拘束を減らしましょう」と言われても、現場からすると「それで本当に安全を守れるのか」という不安が出るのは当然です。

だからこそ、事務長、看護部長、院長が一緒になって考える必要があります。

身体的拘束最小化は、看護部だけの問題ではありません。医師の指示、看護記録、リハビリ、薬剤調整、認知症ケア、転倒転落対策、家族説明、院内研修、委員会運営、施設基準管理まで関わります。

特に200床未満の病院では、人員に余裕があるわけではありません。大きな病院のように専門チームをいくつも作ることは難しいかもしれません。だからこそ、既存の医療安全委員会、認知症ケアチーム、褥瘡対策、転倒転落対策、看護管理会議などと連動させて、無理なく回る仕組みにすることが大切です。

今回の改定を、単なる「減算対策」として見ると、現場は疲弊します。

そうではなく、患者さんの尊厳を守りながら、職員も安心して判断できる仕組みを作る。身体的拘束をした場合も、記録が残り、検討がされ、解除に向けた動きが見える。そういう病院運営に変えていくきっかけと捉えることが大切です。

この連載では、入院基本料通則の見直し内容、減算の考え方、身体的拘束の実施割合の数え方、委員会や研修の進め方、そして身体的拘束最小化推進体制加算まで、200床未満の病院の実務に引き寄せて整理していきます。

まず第1回でお伝えしたいのは、身体的拘束最小化は「現場に我慢を強いる話」ではないということです。

むしろ、現場が迷わないための基準を整え、患者さんと家族に説明できる体制を作り、病院としての安全と尊厳を両立させるためのテーマです。

令和8年度改定では、この部分がいよいよ「形だけ」では済まなくなります。次回は、入院基本料通則の中で、具体的に何が変わるのかを見ていきます。