今月は、退院時薬剤情報管理指導料の算定についての説明をお伝え致します。
医学管理等の項目に「退院時薬剤情報管理指導料」という点数の設定がされています。この「退院時薬剤情報管理指導料」は、医薬品の副作用や相互作用、重複投薬を防止することを目的とする指導料であり、医療機関が患者の入院時に服薬中の医薬品等について確認するとともに、患者に対して入院中に使用した主な薬剤の名称(副作用が発現した場合については、当該副作用の概要、講じた措置等を含む)に関して患者のお薬手帳に記載した上で、退院に際して患者又はその家族等に対し、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行った場合に、退院の日に1回に限り算定できるものです。また、算定にあたっては、施設基準の届出も必要なく、「B008薬剤管理指導料」を算定していない患者に対しても要件を満たせば算定可能です。さらに、他の医療機関への転院や介護老人保健施設へ入所する場合においても要件を満たすことで算定可能です。よって、算定可能な入院基本料を有する医療機関においては、算定状況の確認が必要であり、薬剤師や退院調整担当者との連携も不可欠であると考えます。
B014 退院時薬剤情報管理指導料(退院日1回) 90点(算定通知一部抜粋) (1) 退院時薬剤情報管理指導料は、医薬品の副作用や相互作用、重複投薬を防止するため、患者の入院時に、必要に応じ保険薬局に照会するなどして薬剤服用歴や患者が持参した医薬品等(医薬部外品及びいわゆる健康食品等を含む。)を確認するとともに、入院中に使用した主な薬剤の名称等について、患者の薬剤服用歴が経時的に管理できる手帳(「B011-3」薬剤情報提供料の(2)に掲げる手帳をいう。以下同じ。)に記載した上で、患者の退院に際して当該患者又はその家族等に対して、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行った場合に、退院の日に1回に限り算定する。なお、ここでいう退院とは、第1章第2部通則5に規定する入院期間が通算される入院における退院のことをいい、入院期間が通算される再入院に係る退院日には算定できない。 (2) 入院時に、医薬品の服用状況及び薬剤服用歴を手帳等により確認するとともに、患者が、医薬品等を持参している場合には、当該医薬品等について実際に確認し、その名称等及び確認した結果の要点を診療録等に記載する。 (3) 入院中に使用した薬剤のうち、どの薬剤について手帳に記載するかは、患者の病態や使用する薬剤の種類によるが、少なくとも、退院直前(概ね退院前1週間以内)に使用した薬剤及び入院中に副作用が発現した薬剤については記載する。副作用が発現した薬剤については、投与量、当該副作用の概要、投与継続の有無を含む講じた措置、転帰等について記載する。 (4) 患者の退院に際して、当該患者又はその家族等に、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導(保険医療機関を受診する際や保険薬局に処方箋を提出する際に、手帳を提示する旨の指導を含む。)を行うとともに、退院後の療養を担う保険医療機関での投薬又は保険薬局での調剤に必要な服薬の状況及び投薬上の工夫に関する情報について、手帳に記載すること。なお、指導の要点についても、分かりやすく手帳に記載し、必要に応じて退院時の処方に係る薬剤の情報を文書で提供すること。なお、退院後、在宅療養を必要とする患者であって、手帳にかかりつけ薬剤師の氏名が記載されている場合は、退院後の薬学的管理及び指導に関しかかりつけ薬剤師への相談を促すよう努めること。また、入院時に当該患者が持参した医薬品の服用状況等について保険薬局から提供を受けた場合には、患者の退院に際して、患者の同意を得たうえで、当該保険薬局に対して当該患者の入院中の使用薬剤や服薬の状況等について情報提供すること。 (5) 手帳を所有している患者については、原則として、退院時までに家族等に持参してもらうこととするが、持参できない場合には、必要な情報が記載された簡潔な文書(シール等)を交付し、所有している手帳に添付するよう、患者に対して指導を行った場合又は新たに手帳を発行した場合でも算定できる。 (6) 退院時薬剤情報管理指導料を算定した場合は、薬剤情報を提供した旨及び提供した情報並びに指導した内容の要点を診療録等に記載する。なお、「B008」薬剤管理指導料を算定している患者の場合にあっては、薬剤管理指導記録に記載することで差し支えない。 (9) 保険薬局への情報提供に当たっては、「薬剤管理サマリー」(日本病院薬剤師会)等 の様式を参照して情報提供文書を作成し、当該文書を患者若しくはその家族等又は保険 薬局に交付する。この場合において交付した文書の写しを診療録等に添付する。 (10) 死亡退院の場合は算定できない。 |
算定するにあたり、以下の疑義解釈もございます。
問 情報提供文書の交付の方法として、当該文書を手帳に貼付する方法でも差し支えないか。 答 手帳への貼付ではなく、別途文書で患者に交付する又は保険薬局に直接送付する必要がある。 (令和2年4月16日、疑義解釈資料の送付について(その5)) |
問 退院時薬剤情報提供料を算定する際に、患者が当該患者の薬剤服用歴が経時的に管理できる手帳を所有していない場合は、保険医療機関において手帳を交付しなければならないのか。また、その場合、患者から実費を徴収することは可能か。 答 算定するに当たって、手帳を交付する必要がある。なお、手帳の形式については、要件を満たしているのであれば、保険医療機関で独自に作成した様式で差し支えない。 また、その場合の費用は点数に含まれ、患者から実費を徴収することはできない。 問 退院時薬剤情報提供料を算定する際には、退院直前まで手帳に記載するには多すぎる数の注射剤等を投与していた患者についても、退院前1週間以内の薬剤については、すべて手帳に記載しなければならないのか。 答 必ずしも1週間以内の薬剤をすべて記載するということではない。質問の事例においては、患者の病態や使用した薬剤の種類に応じ、また、退院後の薬物療法における情報共有の必要性を考慮した上で、記載する薬剤について適宜判断すること。 (平成20年3月28日、疑義解釈資料の送付について、一部修正) |

能見 将志(のうみ まさし)
診療情報管理士。中小規模の病院に18年間勤務(最終経歴は医事課長)。 診療報酬改定、病棟再編等を担当。診療情報管理室の立ち上げからデータ提出加算の指導まで行う。