特別養護老人ホームにおけるICT導入の現状と課題
特別養護老人ホームでは、人材不足の解消や業務の効率化を目的に、ICT機器の導入が進んでいます。 2024年度の調査によると、以下のような機器が主に活用されています。
- 介護ソフト:92.8%
- タブレット・スマートフォン:68.7%
- 見守り機器:61.7%
これらの技術は、職員の負担軽減やケアの質向上に寄与すると期待されています。
介護ロボットの活用と効果
ICT機器と並行して、介護ロボットの導入も進んでいます。 現場では以下のようなロボットが導入され始めています:
- 移乗介助ロボット
- 自動排泄処理機器
- コミュニケーションロボット
実際に導入した施設では、 「腰痛などの身体的負担が軽減された」、 「夜間の見守り機器の活用で安心感が向上した」といった声も上がっています。
導入の課題と業界の構造的問題
一方で、導入コストは大きな障壁となっています。 見守り機器や介護ロボットは一台あたり数百万円の費用がかかることもあり、 特に小規模施設には負担が大きいです。
また、以下のような課題も指摘されています:
- 職員がICT機器の操作に慣れず、現場に定着しない
- 導入後のメンテナンスやトラブル対応の負担が大きい
- 記録業務の電子化が進んでも行政対応は依然「紙」
よって、単に機器を導入するだけでなく、業務改革との連動が必要です。
ケアプランデータ連携システムと今後の展望
そのような中、2025年6月から始まる 「ケアプランデータ連携システム」のフリーパスキャンペーンは注目されています。
このシステムにより、居宅介護支援事業所と 介護サービス事業所がケアプラン情報をリアルタイムで共有可能になります。 また、従来の紙によるやり取り(サービス提供票の作成・提出)もデジタル化され、 作業効率の大幅な向上が期待されます。
1年間無料で利用可能なこのキャンペーンは、 「コスト面で導入をためらっていた事業所」にとっては大きなチャンスであり、 今後はこのシステムが業界のスタンダードになると考えられます。
ICT導入は介護業界の変革の一歩
ICT導入は単なる省力化ではなく、 介護業界全体の仕組みを変えるための第一歩です。 地域全体で連携しながら、 質の高い地域包括ケアシステムを構築していく手段として 積極的に推進していく必要があります。
原田 和将
一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。