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「有料老人ホームのサービス提供」について

 

 厚生労働省老健局の主導により、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の第1回会合が、2025年4月14日に開催されました。近年、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は全国的に増加しており、過去10年でその数は約2倍に拡大。施設数はすでに1万6,000件を超えています。特に都市部では公的施設の整備が進みにくく、民間主導の施設が要介護高齢者の受け皿となってきました。しかしその一方で、運営体制やサービスの質をめぐる課題も表面化しています。

 たとえば、東京都など複数地域において、同一事業者が運営する住宅型有料老人ホームで職員への給与未払いが発生。これにより退職者が相次ぎ、入居者が十分な介護サービスを受けられない状況に陥りました。また、施設側が紹介事業者に対し100万円を超える紹介料を支払っていたケースも明らかになっており、利用者の選択肢を制限する「囲い込み」として問題視されています。こうした実態を受けて、今回の検討会では、適正な事業運営の在り方や情報提供の透明化、介護人材の安定確保、囲い込み防止策など、幅広いテーマについて活発な議論が行われました。厚生労働省は、これらを踏まえた具体的な対策を今後取りまとめ、2025年夏頃を目標に制度改善の方向性を示す方針です。

 高齢者が安心して住み慣れた地域で暮らし続けられる社会を実現するためには、有料老人ホームの役割をあらためて整理し、多様化する介護ニーズに対応できる体制を整備していくことが求められます。地域包括ケアシステムの推進においても、本検討会はその重要な一歩となるはずです。

 

原田 和将

一般社団法人 アジア地域社会研究所 所属
介護現場での管理者としての経験を活かした職員研修、コーチングを中心に活動。コーチングはITベンチャーなど多岐にわたる業態で展開。国立大学での「AIを活用した介護職員の行動分析」の実験管理も行っており、様々な情報を元にした多角的な支援を行う。