毎年11月14日は「世界糖尿病デー」。
糖尿病の予防・治療・啓発を目的とした国際的な取り組みであり、近年では医療機関や自治体でも様々なキャンペーンやイベントが展開されています。
糖尿病は生活習慣病の中でも患者数が極めて多く、慢性疾患として継続的な医療を必要とする点で、地域医療の主力分野ともいえます。
本稿では、クリニックの事務長が「世界糖尿病デー」を経営的な視点からどう活かすか、戦略的な取り組みについてご紹介します。
1. 「糖尿病患者との接点」を可視化する
糖尿病は一度診断されると、長期間にわたって医療機関との関係が続きます。つまり、良好な関係性の構築=長期的な来院につながる領域です。
まず事務長として行いたいのは、以下のような情報の「見える化」です。
- 自院の糖尿病患者数(経過観察・投薬のみ・合併症あり など)
- 管理栄養士や検査体制の整備状況
- 血糖測定、HbA1c測定の頻度
- 生活指導の実施率
これにより、糖尿病診療の強み・弱みが把握でき、具体的な改善点や強化領域を見つけやすくなります。
2. 「啓発イベント」で地域認知とブランディング
「世界糖尿病デー」に合わせて、地域住民を対象にした公開イベントを実施するのも有効です。
例:
- 無料血糖測定会
- 管理栄養士による食事相談コーナー
- 医師による健康ミニセミナー(生活習慣改善の話など)
- 患者向けパンフレットの配布・展示
特別な大がかりな準備をせずとも、待合室でのパネル展示や配布資料の設置だけでも効果はあります。
こうした取り組みは、地域での信頼構築・認知拡大につながるだけでなく、プライマリケア機関としてのブランディングにもなります。
3. 地域連携・紹介の導線をつくる
糖尿病は、眼科・腎臓内科・循環器科などの他科との連携が必要になることが多い疾患です。
事務長としては、スムーズな紹介体制の構築や、医療連携先との関係強化を進めておくことが重要です。
・糖尿病網膜症への対応 ⇒ 地元の眼科との紹介フロー確立
・腎機能悪化の管理 ⇒ 腎臓内科との共有シート作成
・フットケア対応 ⇒ 看護師との院内体制構築 など
また、地域の薬局とも連携を強化し、服薬コンプライアンスや副作用の情報共有を行うと、治療の質と患者満足度の向上につながります。
4. 「自費メニュー」や「継続支援」の導入検討
糖尿病予備軍や境界型の患者に対して、健康維持・改善のための自費サービスを導入するのも選択肢の一つです。
こうした取り組みは、医療保険外収入を増やすだけでなく、患者の健康への主体性を高める効果もあります。
5. 医療スタッフのモチベーションにも活用
「世界糖尿病デー」をチームで意識することで、スタッフの知識向上やモチベーションアップにもつながります。
- 院内勉強会(医師・看護師・事務・栄養士合同)
- スタッフによるイベントアイデア募集
- 啓発ポスターやSNS更新をスタッフ主体で実施
特に若手スタッフが活躍できる場を設けることで、職場への愛着や業務の幅の拡大にもつながります。
まとめ
世界糖尿病デーは「啓発の日」であると同時に、地域におけるクリニックの存在意義を再確認し、強化するチャンスです。
事務長としては、単なる年中行事としてスルーするのではなく、
✅ 患者との継続的な関係構築
✅ 地域とのつながりの強化
✅ 医療チームの意識向上
という3つの観点から戦略的に活用していくことが、これからのクリニック経営には欠かせません。