あなたが現在見ているのは HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.75「診療所における“アドボカシー”の視点~地域のかかりつけ機能を支える職員の役割~①」

HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.75「診療所における“アドボカシー”の視点~地域のかかりつけ機能を支える職員の役割~①」

聞き慣れないけれど、大切な言葉「アドボカシー」

皆さん「アドボカシー」という言葉をお聞きになったことはありますか?
「アドボカシー(Advocacy)」という言葉は、医療や介護の現場ではまだ一般的とは言えません。特に診療所の受付や事務職にとっては、日常業務の中で意識する機会は少ないかもしれません。
しかし、地域の中で「かかりつけ医機能」を果たす診療所において、患者さんやご家族の声を受け止め、必要な支援につなげる役割は、まさに“アドボカシー”の実践そのものです。

🍂アドボカシーとは・・・?

アドボカシーとは、直訳すると「擁護」「代弁」「支援」といった意味を持ちます。
医療・介護の分野では、以下のような文脈で使われます。

  • 患者・利用者の権利を守ること
  • 本人の意思を尊重し、必要な情報や支援につなげること
  • 制度や社会の課題に対して、改善を働きかけること

つまり、医師や看護師だけでなく、受付や事務職員も含めたすべての職員が、患者さんの「声を聴き、必要な支援につなげる」役割を担っているということです。

🍂診療所でのアドボカシーの実践事例る

日常的な診療所の仕事の中で、どのような場面に該当してくるのか、少し見てみましょう。

🍁事例①:受付での気づきと対応
受付で診察の順番を待っている高齢の患者さんが、ふと「最近、物忘れがひどくて困ってるのよ」と話す。このような何気ない一言は、医師には伝わらないまま終わることも多いですが、実は重要な“気づき”なのです。
受付職員がその言葉を「ただの雑談」として流さず、医師や看護師に共有することで、診察時に認知機能の確認が行われる可能性が高まります。
また、地域包括支援センターや認知症相談窓口の情報をさりげなく提供することで、患者さんが安心して相談できる環境を整えることができます。

🍁事例②:事務長による制度の橋渡し
退院後に訪問診療を希望する患者さんが、「介護保険で診てもらえるんですよね?」と誤解している。医療保険と介護保険の制度の違いは、一般の方には非常にわかりづらいものです。
事務長若しくはMSWや受付職員が丁寧に制度の違いを説明し、患者さんが混乱しないようにサポートすることが大事になります。必要に応じて、ケアマネジャーや地域包括支援センターと連携し、適切なサービスにつなげることで患者さんが地域の中で生活することを支えることができます。

次回は、「多職種連携の中でのアドボカシーの役割」と「日常業務における実践ポイント」についてお伝えします

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。