前回は、制服が患者との信頼関係やカスハラ抑止に大きく影響することをご紹介しました。今回は、制服を経営資源として活用するために、事務局長として何ができるのか、具体的な取り組みとその効果を掘り下げていきます。
■ 事務長・院長としてできる制服の活用法
制服は、スタッフの快適さだけでなく、組織の方向性や価値観を映し出す「経営資源」です。「事務職員は私服でもいいかな?」「動きやすければ何でもいい」と考える前に、制服がもたらす効果をぜひ再確認してみてください。
以下は、制服を“戦略的”に活用するためのポイントです。
① 制服のコンセプトを明確にする
「患者に安心を」「職員に誇りを」という制服の役割を明文化し、スタッフに周知しましょう。
② 清潔感とサイズ感を重視する
制服の汚れやシワ、サイズが合わない服は、だらしない印象につながります。定期的な点検と交換を制度化するのがおすすめです。
③ 名札・バッジの整備
役職や専門職を示す名札(例:「医療事務主任」「看護師」など)は、カスハラ抑止の有効なツールとなります。
④ 「私服勤務」との差を明確にする
カジュアルすぎる服装は、医療の場としての緊張感を損なう場合があります。服装規定は就業規則の一環としてしっかり整備しましょう。
■ 制服を見直すことで、現場が変わる!
制服や身だしなみは、患者さんのためだけではなく、スタッフ自身を守る“自衛の第一歩”です。
ある医療機関では、「仕事を楽しく、自由な服装で」とアロハシャツを制服として導入しました。導入当初は「新しい!」と職員の評判も上々だったようですが、次第に職場全体に緩みが生じ、残業やクレームが増加。
結局、手術や急患対応に適した従来のスクラブへ戻る流れとなり、アロハシャツは自然と消えていったといいます。
このように、制服には空気をつくる力があり、組織の姿勢を映す鏡でもあるのです。
■ 経営判断としての“制服の見直し”
制服を単なる「経費」や「習慣」と捉えるのではなく、「組織を守るリスクマネジメントツール」として捉え直すことが、これからのクリニック経営には求められます。
制服が変わると、職員の意識が変わります。そして、その変化は、患者の態度やクレームの質にも確実に影響していきます。
まずは、「装いの見直し」から、安心と信頼を生む職場づくりを始めてみませんか?

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
