前回は、「空間が持つ印象が患者さんの安心感や信頼感に与える影響」についてお話をしました。
今回はその続きとして、院内の空間づくりを“今日から実践できる工夫”という視点で掘り下げ、実際に取り組みやすいアイデアや仕組みをご紹介します。
また、記事の最後には、すぐに活用できる「院内掲示物・美化チェックリスト」も掲載しています。
スタッフ全員で共有しやすいシンプルな内容になっていますので、ぜひダご活用ください。
◆ 今日からできる! 院内美化・空間見直しの工夫
「掲示物はたくさんあるし、業者にも貼るように言われているし…」
「人手も少ないし、忙しくて手が回らない…」
――そんな声も聞こえてきそうですが、無理なく取り組める工夫があります。
① 掲示物の“断捨離”を習慣に
有効期限が切れた掲示やポスターはありませんか?
書類の色あせ、埃の付着、テープの汚れなどは清潔感を損ないます。
施設基準など「掲示義務」のあるものも、見やすさ・新しさ・統一感を意識して見直しましょう。
掲示物を整理すると、患者さんも自然と掲示を見るようになります。
② 「患者目線チェック」の徹底を
患者さんの立場になって、次のような視点で空間をチェックしてみましょう。
✔ 座った位置から、ゴミやほこりが見えないか
✔ トイレに不快なにおいがないか
✔ トイレットペーパーやペーパータオルが補充されているか
✔ 掲示の高さや文字の大きさは見やすいか
点検表を作成して、スタッフで共有・持ち回りするのも効果的です。
あるクリニックでは、トイレットペーパーが常に切れているという事態が続いたことで、患者さんが離れてしまった例もありました。こうした“小さな不便”を見逃さない仕組みが大切です。
③ 「整理整頓」はチームの文化に
備品・書類・パンフレットなどは定位置管理を徹底
出しっぱなしや重複配置を防ぐことで、雑多な印象を回避できます
紛失や「探し回り」の防止にもなり、業務効率化にもつながります
④ 「五感に配慮した空間づくり」
視覚だけでなく、香り・音・明るさ・温度といった感覚にも注意を
照明やBGMで「落ち着く・清潔感がある・先生の雰囲気に合っている」と感じさせる空間づくりを目指しましょう
◆ “きれい”の連鎖がはじまると…
あるクリニックでは、掲示物をすべて統一サイズにし、フォントも整え、掲示内容を見直したところ、「他の掲示が気になってきた」というスタッフの声が出始め、壁の汚れの清掃、レイアウトの見直し、待合室の小物の整理までが“連鎖的に”進みました。
不思議なことに、美化活動を始めると「ここも綺麗にしたい」という意識が自然と生まれてきます。
清掃に取り組む人の姿そのものが、患者さんに安心感を与える場面もあります。
◆ まとめ:みんなでつくる「また来たくなる空間」
院内の空間づくりは、特定の誰かが頑張るものではなく、スタッフみんなで取り組むチーム活動です。
「日替わりチェック担当」「月ごとの重点エリアの点検」「季節に合わせた掲示」など、楽しさや工夫を取り入れながら継続できる仕組みをつくることがポイントです。
実際に、年に1回「環境整備月間」として部門別に清掃や掲示の改善に取り組み、全スタッフで点数を付けて表彰している医療機関もあります。
こうした活動の積み重ねが、調査員や見学者から「空気が清潔」「においもない」と評価される“選ばれる理由”となっているのです。
皆さんもチャレンジしてみませんか?
院内掲示物・美化チェックリスト
以下のチェック項目に基づいて、院内の掲示や清掃状況を定期的に確認しましょう。
チェック項目 | 確認ポイント | 点検日 | 担当 | コメント欄 |
① 掲示物の“鮮度”確認 | ・掲示内容の有効期限 ・色あせ、破れはないか | |||
② 掲示物の整理状態 | ・掲示が重複していないか ・見やすく整理されているか | |||
③ 掲示物の衛生状態 | ・ほこり、汚れ、傾き、テープの劣化がないか | |||
④ 掲示物の見やすさ | ・文字の大きさ、色、フォントが読みやすいか | |||
⑤ 掲示の位置確認 | ・患者さん(特に高齢者や車いす利用者)から見やすい高さか | |||
⑥ トイレの点検 | ・におい ・清掃状況 ・補充物品(ペーパー・石鹸)の確 | |||
⑦ 床・椅子・備品の清 | ・待合室の椅子・棚の下・隅などの見落とし箇所がない | |||
⑧ 「定位置管理」の徹底 | ・パンフレット・備品類・診察券などの置き場所が統一されているか | |||
⑨ 季節感の反映 | ・掲示や装飾が時期・季節に合っているか | |||
⑩ スタッフエリアの整理 | ・事務室・休憩室の掲示・整理状況も確認 |

長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。
