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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.68「電話対応を嫌がる職員への対応~院長・事務長だからこそできる“寄り添い”のかたち~」

「電話が怖いんです」
最近の新卒スタッフからよく聞かれる言葉のひとつです。

 声だけでやりとりをする電話は、LINEやチャットといった文字中心のコミュニケーションに慣れた若い世代にとって、とてもハードルの高いものに映っているようにも思えます。

しかし、クリニックにおいては、今もなお電話応対は“顔の見えない接遇”として重要な役割を担っています。だからこそ、現場をまとめる院長や事務長(とりわけ奥様である場合)からの“あたたかな声かけ”が、彼らの自信と安心につながります。

今回は、電話に苦手意識を持っている新入職員に、どのような言葉をかけ、どう寄り添えばよいのか、その具体的なポイントをご紹介します。

 

◆ まずは「怖い気持ち」を否定しない

 新入職員が「電話が苦手です」と話してきたとき、つい「そんなこと言ってないで出なさい」と言いたくなるかもしれません。でも、まずはその気持ちを受け止めることが大切です。

「電話って最初は緊張するよね。私も昔はそうだったのよ」

「怖いって思うのは普通のことだから、大丈夫」

――そんな言葉が、緊張をほぐし安心感につながります。

 

◆ 小さな成長を見つけて、言葉にしてあげる

まずは、電話をかけるところから始めてみては如何でしょうか?

例えば・・・翌日の予約の確認を行う、調剤薬局に終了電話をかける・・・など、簡単な内容から練習の意味も含めて実施してみるのが良いのではないかと思います。

電話をとるというのはとても怖いものです。どんな内容の電話が入ってくるかわからないからです。「よくある質問」や「かかってくる電話の内容」について、横で聞いてもらうようにするのもよいでしょうし、受付時間等のルールなどしっかり伝え、難しい名前(わかりにくい名前)の業者さんなど、教えていくことが必要です。

そして、「初めて電話を取った。」「名前を聞けた。」「取次ができた!」

そんな些細な出来事にも、ぜひ気づいて声をかけてあげましょう。

「今の電話、落ち着いて対応できてたね。」

「ちゃんとメモ取ってたの、偉かったよ」

努力を認め、言葉にして伝えることで、新人さんは「次も頑張ろう」と前向きな気持ちになれます。

◆「失敗してもいいからね」――安心できる土台づくり

電話応対に苦手意識を持つ人の多くは、「間違えたらどうしよう」という不安を強く抱えています。そんなときに効果的なのが、“安心できる環境”であることを伝える言葉です。

「分からなかったら、すぐに相談していいからね」

「間違えたって大丈夫。一緒に確認すればいいよ」

“責められない安心感”があることで、新人さんは失敗を恐れず、前に進むことができるのです。

 

◆ 横にいてくれる存在が勇気になる

新人さんにとって、電話応対は一種の“本番の舞台”

でも、「そばにいるよ」「一緒に確認するよ」という姿勢があるだけで、ぐっと安心感が増します。

「次の電話、私が横で見てるから安心して出てみようか」

「一緒に練習してみようか」

ただ横にいるだけでも、新人さんの“心の支え”になります。

◆ 最後に…自分の声が、クリニックの印象になる

電話応対は、単なる事務作業ではありません

そのスタッフの声が、患者さんにとっての「クリニックの第一印象」となります。

だからこそ、新人さんにはこう伝えてみてください。

「あなたの声が“このクリニックらしさ”になるんだよ」

「大事な仕事を任せたいと思っているよ」

そう言ってもらえることで、新人さんは自分の役割に誇りを持ち、成長の一歩を踏み出すことができます。院長や事務長のほんのひと言が、新人スタッフの未来を変えるかもしれません。「あなたを見ているよ」「応援しているよ」というメッセージを、どうか惜しみなく伝えてあげてください。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。