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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.66「新人指導・・・それってパワハラ?~②」

新入職員の立場から考える「指導を前向きに受け止めるヒント」

新しい職場、新しい仕事、人間関係…。
 不安や緊張の中で日々業務を覚えようとしている新入職員にとって、先輩からの一言一言はとても大きな意味を持ちます。
 時にその言葉が厳しく感じられ、「これはパワハラなのでは?」と戸惑うこともあるかもしれません。でも、すべての指導がパワハラというわけではありません。

今回は、新入職員の立場から「指導とパワハラの違い」、そして「前向きに乗り越えるヒント」を、事例を通して一緒に考えてみましょう。

■事例①:厳しい指導が「成長のきっかけ」になったケース 
 ある先輩スタッフから「報連相がないと、周囲が困るよ」と注意を受けた新人さん。

最初は落ち込みましたが、数日後に「〇〇さんが報告してくれたから助かったよ」と声をかけられたことで自信がつき、「もっと頑張ってみよう」と思えるようになったそうです。

このように、相手の成長を願う思いが伝わる指導は、たとえ厳しさを伴っていても、パワハラではなく「育成」の一環です。表面的な言葉だけでなく、その意図と後のフォローにも目を向けてみましょう。

■事例②:人格を否定されたと感じたケース 
 ある新人が小さなミスをした際、先輩から大きな声で「こんなこともできないの?向いてないんじゃない?」と言われ、大きなショックを受けたとのこと。

その後、出勤が怖くなり、体調を崩してしまいました。

このように、仕事のミスを超えて「人としての存在」まで否定されるような言い方は、明確にパワハラに該当します。どんなに忙しい状況であっても、人格否定は許されません。違和感を覚えたら、早めに上司や相談窓口に相談することも、自分を守る大切な行動です。

■事例③:指導がない・放置されていると感じたケース 
 「何かあったら聞いて」と言われたものの、周囲は忙しそうで話しかけにくく、業務の流れもわからないまま時間だけが過ぎていく。結局、何をしていいのかわからず、孤独感と不安でいっぱいになってしまった…。

このような“見えにくい放置”も、新人にとっては精神的なストレスになります。

先輩に悪意があるわけではなくても、声をかけられない状態が続くことで、「歓迎されていない」と感じてしまうこともあります。

そんなときは、「今の仕事について少し教えていただけますか?」「私にできることはありますか?」と、勇気を出して自分から声をかけてみることも大切です。

■事例④:委縮して何も聞けなくなったケース
 注意されたことで「また怒られるのでは…」と感じ、聞きたいことがあっても言い出せなくなった新人。結果的に独断で動き、さらにミスをしてしまった。

 こうしたケースは案外多く、指導の意図が伝わらなかったことに加えて、「聞けない雰囲気」が職場にあったことも問題です。

「わからないままやる」のではなく、「わからないので教えてください」と伝えることは、責任感のある行動です。遠慮ではなく確認を選ぶことが、自分を守る手段になります。

■新人職員として大切にしたい3つの姿勢

① わからないことは「そのままにしない
 質問することは迷惑ではありません。「理解しようとする姿勢」は信頼につながります。

② 感じた違和感は、自分だけで抱えない
 不安やモヤモヤを感じたら、同僚や信頼できる先輩、上司に相談してみましょう。

③「自分のペース」で大丈夫
 比べなくていい。焦らず、ひとつずつできることを積み上げていきましょう。
 仮に最初時間がかかったとしても、作業工程(手順)になれて来たら自然とスピードアップできるものです。

■最後に:あなたは一人ではありません

新しい職場では、人間関係も職場の雰囲気もこれまでとは違い、戸惑うことや不安、緊張が強くなって時に自信を無くしてしまいそうになるかもしれません。初めは誰しも「初めて」のことばかり・・・・出来ないことがあっても仕方がありません。

「一人ではできないことも、誰かとならきっとできる。」

“Alone we can do so little; together we can do so much.”

— ヘレン・ケラー

 新しい職場に飛び込んだあなたには、たくさんの応援が待っています。わからないことを聞く勇気、困ったことを伝える行動、そのすべてが「つながり」を生み出します。
 あなたの一歩に、誰かが応えてくれる。 そして、あなたもいつか誰かの一歩に応えられる存在になることでしょう。

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。