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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.39医療接遇~基本の「き」~

医療機関で接遇の相談を受けるケース

ご相談の中には、「私語が多い」「患者さまに対する言葉遣いや態度」「クレーム対応」といったことなのですが、中には、職員間の対応で「挨拶をしない」「報連相ができていない」「注意した時の態度がわるい」といったこともあります。 

そもそも医療機関における接遇はなぜ必要なのでしょうか? 

医療接遇が必要なわけ 

患者さまは、来院時には体調が悪く不安を感じ、少なからず緊張を覚えておられます。自分自身の状況を的確に説明できる方ばかりではなく、患者さまやご家族さまから話をお聴きすることも、苦労されているかもしれません。そういった状況の中で、患者さまに安心して相談できる場だと感じてもらうことがとても大事になってきます。 

医療機関における接遇は、患者に寄り添うことで「安心感」を感じてもらい、医療機関との信頼関係を築くために重要です。医療機関のサービスの質を向上することにもつながり、結果としてクレームも減らすことが可能です。医療従事者の負担軽減にもつながってきますし、働きやすい職場にもなります。 

接遇スキルの基本~接遇5原則~ 

医療接遇は診察や診断への不安、病気の療養中の生活に不安を感じる患者さまやご家族さまに、しっかりと寄り添うことが大事になります。 

接遇5原則は①身だしなみ、②挨拶、③表情、④言葉遣い、⑤態度の五つです。 

この基本はお互いに作用しあい、相手さまに心を届ける重要な役割を果たします。 

  • 身だしなみ 

医療の現場では、清潔感のある身だしなみが大切です。特に頭髪や爪は、衛生上や安全上の配慮も必要になります。 

  • 挨拶 

コミュニケーションの第一歩といわれるのが「挨拶」です。「あなたに気付いていますよ」という意思表示にもなります。 

  • 表情 

医療機関においてはじめて対面する窓口の方の印象は、とても重要です。医療機関全体の印象を左右します。柔らかい表情を心がけましょう! 

  • 言葉遣い 

適切な敬語を使うことは、相手を大事に思う心を伝える手段の一つです。それとともに、相手にとってわかりやすい伝え方をすることも重要です。 

  • 態度 

態度は心の状態を表します。人は態度からも多くの感情を読み取るといわれます。無意識の行動を意識することも大事です。 

患者さまの受療動向の変化 

厚生労働省では「受療動向調査」というものが行われています。その他にも、それぞれの医療機関で「患者満足度調査」などのアンケート調査が行われています。 

その内容を見ていると、医療機関を選ぶ際、30年ほど前は、「腕のいい医師」や「専門的な高度な医療提供」が上位に来ていました。この先生に診てほしい、治してほしい・・・ということが、病院を選ぶ時の条件になっていたわけです。当時は、3時間待ちの3分診療といわれた時代でもありましたが、それでも、技術の高い先生めがけて遠くても通院されていたわけです。 

今年の診療報酬改定の資料の中で、世の中の移ろいを感じる記事がありました。 

「かかりつけ医機能に求めるものは何か?」という調査結果なのですが、驚くことに、技術の高い先生よりも、「日常的な相談ができる」ことや「悪化した時にどう対処したらいいか教えてくれる」「いざというときに専門の先生につないでくれる」と変化してきています。専門的な医療が必要な場合は、「かかりつけ医からの紹介」が上位に来ています。つまり、相談しやすい医療機関、話がしやすくて、専門的な医療機関とのつながりがある、という医療機関が選ばれる時代になってきているのです。 

接遇力を高めよう! 

先ず第一には、患者さまを尊重し寄り添うことで、患者さまやご家族さまが安心して来院し、相談できるようになれば、診察や診断に対する不安や緊張を取り除くことができ、医療機関受診へのハードルを下げることができます。 

自分自身の良い経験は、親しい方が困っているときにいい医療機関として紹介したくなるものです。医療機関にとっては、最大の増患対策になるでしょう。 

また、接遇スキルの高いスタッフが多いと、患者さまの変化にスグに気付くことができ、トラブルやヒヤリ・ハットを防ぐこともできます。スタッフ間のコミュニケーションもよくなり医療安全にも貢献できるでしょう。 

研修を受けたからといって、すぐに改善するわけではないのが接遇力です。この基本スキル「接遇5原則」を意識し、日々実践することで、接遇スキルは向上します。皆さんの医療機関でも取り組んでみられませんか?! 

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。