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HOSPITALITY 〜長先生の接遇レッスン〜 VOL.36寄り添うということ

寄り添うとはビジネスシーンでは、「心情的に歩み寄ること」。

「寄り添う」とは、国語辞典によると、「体を寄せて、すぐ近くによる」「もたれかかるようにそばに寄る」という意味があります・・・つまり物理的に近くに寄っていくことを指していますが、ビジネスシーンや医療機関・介護施設の接遇の場合だと、「親身になって相手の気持ちを理解しようと努め、共感すること」と心情的に歩み寄る場合のことを指していますね。

 

様々な場面で使われることが多い言葉で、心情的に歩み寄る「寄り添う」場面は、つらい場面・不安な場面が多いかもしれません。例えば・・

 

①認知症や末期がんで治る見込みがないとわかったとき

②自分とは違う価値観の方と、活動しないといけないとき

③仕事や人間関係がうまくいかず悩んでいるとき

 

このような時に、皆さんはどのように対応したらいい・対応してほしいと思われますか?ビジネスシーンでの寄り添うときのポイントは3つあるのではないかと思っています。

ポイント1/相手の話を聴く(傾聴)

人は不安なこと、困っていることなど、話を聴いてほしい・話がしたいと思っています。その場合、何か解決してほしいと思っていることは少なく、ただただ、聞いてほしい、そしてそばにいて共感してくれるだけで、安心したり心が軽くなったりすることが多いと思います。ジャッジや意見は不要な場合が多いものです。

ポイント2/受容する・共感する

 

最近では多様性という言葉があるように、医療機関でも様々な方が来られます。家庭環境も様々で、付き添いの方も、身内ではない場合もあります。ご家族さまが同居していても、十分に行き届いた介護ができていない場合もあるでしょう。また、「共生社会」という言葉が示すように障害を持ちつつ、治療を受けつつ仕事を継続される場合も増えてきました。そういった場合に、「いや、でも・・・」と言いたくることもあるでしょうが、「そういうこともあるよね」と相手の価値観を受け止めることも大事なのではないでしょうか。

 

ポイント3/察する・尊重する

 

相手が何を望んでいるか、「この人のために私に何ができるだろう」と考えて行動することも、大事なポイントになると思います。そのためには、相手の気持ちを察すること、そして相手を尊重した行動が大事だと思うのです。医療機関における「寄り添い方」の事例をご紹介します。

 

 

 

触診した先生の顔色が変わり、厳しい表情で、検査の指示を出されました。そして一言「あなたの働いている病院にも乳腺の先生はいらっしゃるでしょう、このしこりがどういうものか検討はつくでしょう。なぜもっと早く相談しなかったの?」と、言われ涙があふれてきました。検査を待つ間も、涙は止まりません。その様子を見た看護師が別室に案内してくれ、一人にしてくれたそうです。どのくらい経ったころか、その看護師がコーヒーをいれてきてくれ、話を聴いてくれたそうです。

母親の様子がおかしい(活気がない、食事量が減った、怒りっぽい)と受診したクリニックから病院を紹介され、受診されました。クリニックでは特に異常ないといわれ、そんなに心配なら・・・と紹介されたのです。様々な検査の結果告げられたのは、認知症・・・。今後どうなるのだろうと思うと、不安でたまらない・・・と、看護師さんに話をされたそうです。しばらく話を聴いてもらった後、看護師さんが認知症の家族会があることを教えてくれたそうです。それから3~4カ月たったころ初めて参加された時に、同じ悩みを持つ方からの話を聴けて、気持ちが軽くなったと話されていました。どちらも状況は違いますが、この「寄り添う」ということを実践されたよい事例だと思います。じっくりと話を聴いて待ってくれたこと、その場でジャッジするのではなく「感じているままに」受け止めてもらえたこと、そして、相手のことを考えてコーヒーをいれたり、家族会を紹介してくれたりしたことが本当にうれしかったと話をしてくれました

皆さんの医療機関でも、このようなホッとするエピソードがありませんか?ぜひ皆さんで共有して「寄り添う」ということを実践してみませんか?

長 幸美(ちょう ゆきみ)

(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。