誰でも初めてはあるもの。その時の気持ちを思い出し、指導を行いましょう。
とうとう年末です。皆様いかがお過ごしでしょうか?今年は5月に新型コロナウイルス感染症が5類に変更になり、新たに仲間に加わった新入職員の方々も少しずつ現場に慣れてこられたころではないでしょうか? 新人さんも先輩方も少し慣れてきて、徐々に本音が出てくるころ・・・今日は「初心忘るべからず」というお話しです。
- 初心とは・・・
「初心忘るべからず」とは、室町時代の能楽師 世阿弥の言葉とされています。一般的には「何事においても、始めたころの気持ちを忘れずに」という理解だと思いますが、世阿弥が花鏡の中で説明している「初心」とは、「未熟な状態」を指していて、物事を始めたときのわからなかったことやその時に味わった悔しさ・恥ずかしさ、そして今に至るまでのたくさんの努力や関わりを忘れてはいけないということを説いている、とても深い言葉なのです。 今ベテランといわれている職員も、はじめは「初心者」。かくいう私も、右も左もわからない状況で、医事のことも何もわからずに飛び込んできて、様々な方の教えを請い、未熟なところを補ってもらいながら「今」があります。今でも、周りの方にどれだけ助けてもらっているかわかりません。そう考えると感謝しかないのです。
- 何回行ってもできない・やらない・・・?
医療機関に限らず、「何度も教えているのに…なんで?」と思う場面はたくさんありますよね。私も先生方から「事務が何をやっているかわからない」「今どきの若い方は何にもやらない」というご相談を受けることがあります。なかには、先輩が一人で仕事を抱え込んで、遅くまで残っている・・・というようなご相談もあります。 私は、「出来ない・やらない」には、それなりの理由があると思っています。「やらない」のではなく「やれない」のではないか・・・と。 例えば・・・ 作業だけを教えて、「何のために、実施するのか」ということが伝えられていないケース。「前職の医療機関では、そんなことしてなかった!面倒だからやらなくてもいいよね・・・」と出納帳を毎日書いていなくて、月末に現金が合わせられなくなったり、子供は「医療証」がないか確認してといわれ、そのスタッフの感覚で「小学生」や「制服を着ている子」には聞くけれど、私服の中学生・高校生には確認しなかったり・・・。何のためにその作業を行うのか、ということがわかっていれば、注意深く対応ができたのではないかと思います。
- 面倒なことこそ、急がば回れ!
忙しい窓口や医療現場では、その場で原理原則をしっかりと説明する時間がない場合があります。そのような時、作業方法だけを伝えることもあると思いますが、その後の時間を見つけ、「何のためにやる作業なのか」ということを整理する時間をとりましょう。 例えば、先ほどの「出納帳」の例など、人によっては「昔からこうしているから」という便利な言葉で片づけてしまおうとしてしまいます。仕事には何故やる必要があるのか、しっかりと説明していきましょう。それと同時に「この作業本当にやらないといけないのか?」と考えていくことも大事です。これまではそうしてきたけれど、もっといい方法があるかもしれない・・・改善のきっかけになるからです。
- そして・・・「初心忘るべからず」
長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。