患者家族の立場から見た看護
今日は患者さんのプライバシーについて少し考えてみたいと思います。
皆さん、受付や待合室、診察室の出入り、そして病室の出入りなど、どのようにされていますか?私はこれまで医療機関の立場で病院の中を見ることが多かったのですが、今回、父の入院を通して、患者の立場で医療機関の皆様のご様子を拝見する機会がありました。そこで、医療機関の非日常性を強く感じることがありました。患者やその家族としてのプライバシーのなさも痛感したことを共有したいと思います。
- 待合室にて・・・あ~やっちゃった~!
医療機関の待合室に大きな声が響き渡りました。何事だろうと思ったら、車いすを押しつつ検体を運んでおられた様子の病院スタッフさんだったのですが、その場に患者さんを残し、どこかへ行かれ、バタバタと戻ってこられました。患者さんはその場で置き去り状態。当然何が起こったのかと、待合室の視線は患者さんへそそがれています。患者さんはどうしていいかわからず、下を向いてしまいました。
- いきなりドアを開ける・・・あ~すみません!
これまで平日の午後10分だけの面会しか許されていませんでした。コロナが空けても、高齢者が入院している状況では仕方がないかなと思いましたが・・・
日頃、ノックをしたり、声をかけたりすることはないのでしょうか・・・?
付き添いでいる間に一体何人のスタッフがいきなり入ってこられたか・・・?
- 診車を押して巡回中の看護師さん・・・1号の〇〇サン、コールみて~~!
どうやら便失禁があった様子で、部屋の出入りもガタゴト、ドタバタ・・・。その間も、大きな声で、タオルやシーツなど指示が飛んでいます。周りの病室の患者さんは慣れているのか、平然とされていますが、居合わせた家族は、アタフタ、オロオロ・・・。
さて、これらは通院や入院時に家族として付き添うことが何度かあり、そこで見かけた光景です。
日常的になってしまっている医療機関では、あらあらまた?と受け流しているかもしれませんが、たまたま居合わせたものにとっては、どうなのかな?と思うことはたくさんあります。師長さんや担当看護師さんは丁寧に対応されていても、その場限りの対応だと、病院全体にないがしろにされている印象になってしまいます。
忙しい医療現場のなかでは、「致し方がない」という部分や、緊急性が高い現場では、そんなこといっていられないということもあるかもしれません。
あなたが同様のことをされたらどう感じますか?
あなたの親だったら、子に対してだったら、どうしてほしいと思いますか?
その小さな行動が患者さんだけでなく、そのご家族も周りでみている方も「この病院で大事にされている」という安心感になるか、「ないがしろにされた」とクレームに繋がるか、分かれ道です。
- むすびに
一つ目の事例では、何が起こっていたのか?実は、患者さんが粗相をしてしまっていたのですが、大きな声を出したがために、待合室中の中で注目されてしまう状況になってしまったのです。同じような例で、顔面の怪我の患者さんで、受付に待合室で待つように促され、クレームになった事例などもありました。もしあなたが患者さんだったら・・・と思うと、どうしてもらいたいか、想像はつきますよね。
療養型の病院など、患者さんの意識もなく、開けっ放しで病棟看護をされている医療機関も多いかもしれません。逆にコロナ禍になり、廊下に通じるドアは閉められている場合もあるでしょう。そんな医療機関で、病室に入るときにノックをする・・・という当たり前の行動できていますか? 病院の生活は非日常であるとは言え、また意識がない患者さんであるとはいえ、その患者さんを尊重する気持ちがあれば、対応時にノックをする、何をするのか声をかける・・・ということは当たり前のことだと思います。3番目の事例にもつうじることですが、私が対象者の家族だったら、いやだなあ・・・と思うことです。
今回のこのお話を読んで、ぜひ院内の皆さんで話をしてみてほしいと思います。
長 幸美(ちょう ゆきみ)
(株)M&Cパートナーコンサルティング パートナー
(株)佐々木総研 医業経営コンサルティング部 シニアコンサルタント
20数年の医療機関勤務の経験を活かし、「経営のよろず相談屋」として、医療・介護の専門職として、内部分析・コンサルティングに従事。